華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Yellow Submarine もしくはモンティ·パイソンあるいは機関車トーマス (1966. The Beatles)

りーかーしーつーにヘビのホルマリン
ヘビのホルマリン ヘビのホルマリン

むーしーよーけーに使うナフタリン
使うナフタリン 使うナフタリン

ふーろーおーけーに入れるバスクリン
入れるバスクリン 入れるバスクリン…

-嘉門達夫 1994年(頃)


Yellow Submarine (Total Balalaika Show)

Yellow Submarine

英語原詞はこちら


In the town where I was born
Lived a man who sailed to sea
And he told us of his life
In the land of submarines
So we sailed up to the sun
Till we found a sea of green
And we lived beneath the waves
In our yellow submarine

ぼくが生まれたまちに
むかし舟のりをしていたひとが
すんでいました。
そしてそのひとはぼくらに
せんすいかんの国のはなしを
してくれました。
それでぼくらもおひさまに向かって
ふなでしたのです。
みどりいろの海にであうまで。
そしてぼくらはなみのしたの
ぼくらのきいろいせんすいかんで
くらすことにきめたのです。


We all live in a yellow submarine
Yellow submarine, yellow submarine
We all live in a yellow submarine
Yellow submarine, yellow submarine


ぼくたちわたしたちはみんな
きいろいせんすいかんでくらしています
きいろいせんすいかんで
きいろいせんすいかんで
ぼくたちわたしたちはみんな
きいろいせんすいかんでくらしています
きいろいせんすいかんで
きいろいせんすいかんで


And our friends are all aboard
Many more of them live next door
And the band begins to play

ぼくらのともだちもみんな
のりこんでいます。
となりでくらしているなかまも
いっぱいいます。
そしてがくたいが
えんそうをはじめるのです。


We all live in a yellow submarine
Yellow submarine, yellow submarine
We all live in a yellow submarine
Yellow submarine, yellow submarine

ぼくたちわたしたちはみんな
きいろいせんすいかんでくらしています
きいろいせんすいかんで
きいろいせんすいかんで
ぼくたちわたしたちはみんな
きいろいせんすいかんでくらしています
きいろいせんすいかんで
きいろいせんすいかんで


Full speed ahead Mr. Boatswain, full speed ahead
Full speed ahead it is, Sergeant.
Cut the cable, drop the cable
Aye, Sir, aye
Captain, captain

甲板長、全速前進!全速前進!
全速前進であります。軍曹どの。
ケーブルを切断したまえ。
ケーブルを降ろしたまえ。
アイアイサー、船長。
船長。


As we live a life of ease
Every one of us has all we need
Sky of blue and sea of green
In our yellow submarine

ぼくらは気らくにくらしているし
みんながほしいものは
なんでも持っています。
ぼくらのきいろいせんすいかんから
見えるのは
あおいそらとみどりのうみです。


We all live in a yellow submarine
Yellow submarine, yellow submarine
We all live in a yellow submarine
Yellow submarine, yellow submarine
We all live in a yellow submarine
Yellow submarine, yellow submarine

ぼくたちわたしたちはみんな
きいろいせんすいかんでくらしています
きいろいせんすいかんで
きいろいせんすいかんで
ぼくたちわたしたちはみんな
きいろいせんすいかんでくらしています
きいろいせんすいかんで
きいろいせんすいかんで...


イエローサブマリン音頭

およそ、世界中でこんなにも多彩な「おちょくられ方」をしてきた楽曲が他にあっただろうか。冒頭の嘉門達夫の替え歌しかり、かの大瀧詠一プロデュースによるところの金沢朋子さんの楽曲「イエローサブマリン音頭」しかりである。もっとも嘉門達夫のやつは許可が下りなかったのだそうで、今では「幻の替え歌」になっているらしい。むかし関西ローカルの夜中の番組で偶然見ることのできた私は、とてもラッキーだったのだな。

歌詞的に見てもこんなに「無内容」な歌は珍しいぐらいだと思うのだけど、その「愛されっぷり」はものすごい。このかん特集している「トータル·バラライカショー」で「ハッピー·トゥゲザー」の後に演奏されたのがこの楽曲だったわけだが、曲が終わってもヘルシンキに集まった7万人の観衆はほとんどエンドレスで「いぇーろさぶまりん!」を合唱し続けている。何があったのだろうと思ってしまうぐらいの盛り上がり方である。ステージそのものを映した動画が見つからなかったことは残念で仕方ないのだけれど、こんな単純な音楽で人間はここまで「幸せな気持ち」になれるものなのかという鮮烈な衝撃は、音声だけを通しても十二分に伝わってくる。一番上に貼りつけた動画は、ぜひ聞いて帰って頂きたいと思う。

ポール·マッカートニーはもともと、「子ども向けの歌」を作るつもりでこの歌を作りはじめたのだという。何がどうなって「黄色い潜水艦」なのかということは全く意味不明であるにせよ、「誰からも愛される罪のない歌」に仕上がっていることは、そういう経緯にもよっているのだと思われる。(ただし、アドリブの台詞の部分に「軍人」が出てくることはハッキリ言って気に入らないのだが)。またこの曲でボーカルをとっているのが「ボーッとした声のリンゴさん」であることも、間違いなく人気の理由のひとつだろう。リンゴさんの曲だからこそ「おちょくりやすい」のだとか言ってしまうとさすがに失礼ではあるけれど、実際このブログでも、何度もおちょくらせて、もらってしまっているもんなあ。

さらにこの曲には、いろいろな「遊び心」が仕込まれている。うちの母親が70年代になって初めて「ステレオ」というものを手に入れた時には、この曲で右と左のスピーカーから「違う音」が聞こえてくるのが嬉しくて嬉しくて、結構いい年だったはずなのだけど両方のスピーカーの間を「行ったり来たり」していたらしい。そういう録音の仕方が「始まったばかり」の時代の曲だったのだな。途中で聞こえてくるブクブク言う音はジョン·レノンが洗面器の水にストローを突っ込んで出していたのだそうで、そういう「手作り感」にも溢れている。さらにその時スタジオに遊びに来ていたミック·ジャガーとブライアン·ジョーンズ、さらにミックの彼女だったマリアンヌ·フェイスフルにジョージと付き合っていたパティ·ボイドといった人たちまで、コーラスや効果音担当で録音に加わっているのだそうで、上のうちミック·ジャガー以外の全員の名前がレコードにクレジットされてもいる。ただ、そうなのかと思って聞き直してみても、コーラスの中にどうしても「女性の声」を見つけることができない気がするのは、私の聞き方が悪いのだろうか。


Yellow Submarine

この曲は発表から2年後の1968年に公開された同名のアニメ映画「イエロー·サブマリン」の主題歌にもなっており、子どもの頃にテレビでやってたのを見た記憶があるのだけれど、日本のアニメと全く違うその絵柄が「怖くて」仕方なかったことを覚えている。広い肩幅に小さい顔、長すぎる脚、カクカクした動き方、何から何までが怖かった。イギリスの子どもたちはこれを見て「楽しい気持ち」になるのだろうかと思うと、すごく不思議な気持ちになったものだ。


Monty Python's Flying Circus

高校の頃に、ビートルズの面々が大好きだったというイギリスのコント番組、「空飛ぶモンティ·パイソン」がNHKで特集されていたのを見た時にも、そのオープニングアニメが悪夢のように「怖かった」ことを覚えているし、またその怖さは「イエローサブマリン」の怖さと全く同質のものだ、と感じたことを覚えている。「モンティ·パイソン」のアニメーションを担当していたのはアメリカ出身のテリー·ギリアムという人で、「イエローサブマリン」のスタッフはまた全然別の人たちだったらしいのだけど、やっぱり英語圏の文化に通底する何かみたいなものが、あったのだろうか。そしてこうした映像の気色の悪さは悪さとした上で、これが例えばジョン·レノンという人の「頭の中」だとか言われてみるとすごく説得力があるように感じてしまうのは、私だけだったりするのだろうか。興味深いことである。ちなみにモンティ·パイソンって東京では「吹替版」が放送されていたのだということを初めて知ったのだけど、翻訳の人も声優さんたちも、すごい仕事をしているな。


フクロウの柔軟体操の時間

当初、「イエローサブマリン」の冒頭には、「これはこれは黄色い潜水艦のお話…」みたいなリンゴさんによる子どもたち向けのナレーションが入ることになっていたのだけど、なぜかボツになったらしい。けれどもその「子どもたちへのナレーション」は、20年後にリンゴ·スターの天職となった。という海外サイトの記述を読んで、私はとてもビックリした。昔「ひらけ!ポンキッキ」でやっていて、今でも続いているという子ども向けの人形アニメ、「きかんしゃトーマス」で、英語版のナレーションを担当してきたのはずっとリンゴ·スターだったというのである。日本では森本レオさんがやっていたあの声が、オリジナル版ではリンゴさんの声だったわけなのだ。だから英語圏では世代によっては、リンゴ·スターといえば「きかんしゃトーマス」の人だというイメージの方が強いらしい。


きかんしゃトーマス 第1話「トーマスとゴードン(放送当時版)」


Season 1 Episode 1 Thomas and Gordon

YouTubeには日本語版と英語版の両方の第一話が上がっていたもので、比べて見ていると不思議な感慨にとらわれてしまった。それにしても子どもの頃の私は、このシリーズも好きではなかったんだよな。「機関車の顔が怖かった」から。今でもどうしても「かわいい」と思えないのだけど、こういう感覚だけは、どうしようもないものなのだろうか。



この曲のシングルジャケットのジョン·レノンの「指の形」に、私の目は釘付けになった。これは遠い昔、「キックオフ」というマンガで太陽くんと由美ちゃんが交わしあっていたハンドサインそのものではないか。





子どもの頃の私はこの指の形の意味が、ずっと分からなかった。時々ヘビメタの人も同じような指の形をさせてイキっていたりするのだけど、あれは「悪魔崇拝」を意味するハンドサインなのだということを誰かに聞いて、キックオフというマンガを描いていた人は何者だったのだろうと大混乱に陥ったことがある。実はそれが「I Love You」を意味する手話のサインだったのだということを教えてくれたのは、中国人の友だちだった。BEYONDという香港のバンドの人たちが、この指をいつも決めポーズにしていたのだ。(悪魔崇拝を意味する「コルナサイン」は、正しくは人差し指と小指だけで作るらしい)



海外サイトによると、この「I Love You」の手話をファンへのメッセージとして初めて使った音楽アーティストが、この「イエローサブマリン」のジャケットにおけるジョン·レノンであったらしい。楽曲とはほとんど関係ない情報ではあるけれど、一応付記しておきたいと思う。「勘違いしていたいろんな歌詞」と同じく、あのハンドサインもまた「勘違いして」いろんなところで私は使ってしまっていたのである。


アンジー パンをひときれ

最後のコーラスまで含めてきっと「イエローサブマリン」の影響を受けているのだろうなと思われる、同じく子ども向けなのだけど、とてもしっとりした歌。こんな素晴らしい歌が知られていないというのはあまりにモッタイないという理由だけで、最後に貼りつけさせてもらいました。何か、地味だと思ってたけど、掘り下げてみると想像以上にいろんなことが出てくる曲だったな。というわけでまたいずれ。


=楽曲データ=
Written by: Lennon-McCartney
Recorded: 26 May, 1 June 1966
Producer: George Martin
Engineer: Geoff Emerick
Released: 5 August 1966 (UK), 8 August 1966 (US)

Ringo Starr: vocals, drums
John Lennon: backing vocals, acoustic guitar
Paul McCartney: backing vocals, bass
George Harrison: backing vocals, tambourine
Mal Evans: backing vocals, bass drum
Neil Aspinall, George Martin, Geoff Emerick, Pattie Harrison, Brian Jones, Marianne Faithfull, Alf Bicknell: backing vocals

Key: F♯