華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Hey Jude もしくは ごんぎつねを殺した男 (1968. The Beatles)



 それは、兵十。
 しかも読み方は、ひょうじゅう。
 でも、いい。
 これは私のブログである。
 ビートルズの「へいじゅー」といえば
 私にとってはずっと昔から
 「ごんぎつねを殺した男」の
 歌だったのだった。


Hey Jude

Hey Jude

英語原詞はこちら


Hey Jude, don't make it bad
Take a sad song and make it better
Remember to let her into your heart
Then you can start to make it better

なあ、ジュード
悪いように考えるもんじゃないよ。
かなしい歌でもじっくり聞いて
ちょっとずつでもいい方に
変えて行こうじゃないか。
忘れないでほしい。
あのひとに心を開くこと。
そしたらきっと
うまくいきだすと思うから。


Hey Jude, don't be afraid
You were made to go out and get her
The minute you let her under your skin
Then you begin to make it better

なあ、ジュード
こわがってちゃダメだ。
出て行ってあのひとを
自分のものにすること。
おまえはそのために
生まれてきたようなもんじゃないか。
そのひとを自分の内側に
しっかりと受け入れたとき
すべてはそこから
うまくいくようになると思うよ。


And anytime you feel the pain, hey Jude, refrain
Don't carry the world upon your shoulders
For well you know that it's a fool who plays it cool
By making his world a little colder
Nah nah nah nah nah nah nah nah nah

それでもし
苦しく感じることがあったら
そのときはジュード
何もしなくていい。
世界を丸ごと自分の肩に
背負う必要なんてないんだよ。
わかってるだろ。
自分の周りの世界を
冷たいものにしてまで
クールに振る舞おうとするなんて
そんなのはfoolのやることだ。
な?な?な?


Hey Jude, don't let me down
You have found her, now go and get her
Remember to let her into your heart
Then you can start to make it better

なあ、ジュード
がっかりさせないでくれよ。
おまえはあのひとと出会ってしまった。
今は駆け出して
そのひとを自分のものにする時だ。
忘れないでほしい。
あのひとに心を開くこと。
そしたらきっと
うまくいきだすと思うから。


So let it out and let it in, hey Jude, begin
You're waiting for someone to perform with
And don't you know that it's just you, hey Jude, you'll do
The movement you need is on your shoulder
Nah nah nah nah nah nah nah nah nah yeah

だから
さらけ出せばいい。
受け入れればいい。
なあジュード
始めようじゃないか
自分と一緒にやってくれる
誰かのことを待ってるみたいだけど
わかんないかな。
それはおまえ自身なんだよ。
なあジュード
おまえがやるんだよ。
ものごとがどんな風に進んで行くかは
おまえの肩にかかってるんだから。
な?な?な?


Hey Jude, don't make it bad
Take a sad song and make it better
Remember to let her under your skin
Then you'll begin to make it
Better better better better better better, oh

なあ、ジュード
悪いように考えるもんじゃないよ。
かなしい歌でもじっくり聞いて
ちょっとずつでもいい方に
変えて行こうじゃないか。
忘れないでほしい。
あのひとを自分の内側に
しっかりと受け入れること。
そしたらきっと
うまくいきだすと思うから。


Nah nah nah nah nah nah, nah nah nah, hey Jude
Nah nah nah nah nah nah, nah nah nah, hey Jude
Nah nah nah nah nah nah, nah nah nah, hey Jude
Nah nah nah nah nah nah, nah nah nah, hey Jude
Nah nah nah nah nah nah, nah nah nah, hey Jude
Nah nah nah nah nah nah, nah nah nah, hey Jude
Nah nah nah nah nah nah, nah nah nah, hey Jude
Nah nah nah nah nah nah, nah nah nah, hey Jude
Nah nah nah nah nah nah, nah nah nah, hey Jude
Nah nah nah nah nah nah, nah nah nah, hey Jude
Nah nah nah nah nah nah, nah nah nah, hey Jude
Nah nah nah nah nah nah, nah nah nah, hey Jude
Nah nah nah nah nah nah, nah nah nah, hey Jude
Nah nah nah nah nah nah, nah nah nah, hey Jude
Nah nah nah nah nah nah, nah nah nah, hey Jude
Nah nah nah nah nah nah, nah nah nah, hey Jude



「fool」は「精神病者」に対する差別表現です。ここでは原文をそのまま転載しました。

=翻訳をめぐって=

この歌には、いろんな逸話がある。ポールが誰のためにどんな気持ちを込めて書いた歌だったのかということも、後年のインタビューなどからある程度はハッキリしている。けれども歌詞の言葉それ自体は、あえてそれを「ハッキリ」させることなく、誰から誰に向けた歌なのか、いろんな解釈が可能になるような形で書かれている。つまりは、一般化されている。だから翻訳にあたっても鑑賞にあたっても、いろんな予備知識を頭に入れるより先に、まず言葉としてこの歌が心に入ってきた時に英語話者の人たちにはそれがどんな風に「聞こえる」のかということを念頭において、言葉そのものと素直に向き合うことが重要であると思う。だから今回は「翻訳をめぐって」を先にやって、逸話部分は後回しにすることにしたい。

「ジュード」というのは男性とも女性とも解釈できる名前だそうである。男性であるとした場合、告白できない片想いでウジウジしている友人に向かって「バシッとやれ」と励ましている歌だと解釈するのが一番「自然」だと思うし、またそういう聞き方をしている人が一番多いのではないかと思う。女性であるとした場合、「go and get her」みたいな歌詞をどう解釈すればいいのかという疑問も生まれるが、例えばずっと仲違いしていた友人やあるいは母親、娘といった相手に対し、ジュードの方から歩み寄って和解すればいいじゃないか、というメッセージなのだと解釈すれば、別に不自然ではない。

さらに「ジュード」は「子ども」である可能性もあり、その場合は例えば両親が離婚して新しいお母さんとうまく行っていなくて悩んでいるシチュエーションだとか、逆に本当のお母さんとの関係がうまく行かなくなってしまった場合だとか、いろいろなケースが考えられる。そこまで深読みする必要があるのかという感もないではないが、後述するようにこの歌は元々文字通り「そういうシチュエーション」から生まれた歌だったとのことなので、そういう可能性まで頭に入れておくことが重要である。もとより、それに「とらわれる」必要は全然ないと思うのだけど。

つまりこの歌は、「いろいろな風景」を聞き手の中にイメージさせることが可能なように作られているのである。その「風景」は歌の言葉から聞き手が自分で作りあげるものだから、そこに「正解」はないし、逆に言うなら聞き手がどんな「風景」を思い描いたってそれは全部「正解」なのだ。ただし、そのイメージが「ヘンな日本語訳」によって作りあげられたものであるならば、当然その「風景」は「ヘンな風に」歪められたものになってしまうことだろう。いかんせんこの歌は「英語」で書かれているのである。

「ヘンな日本語訳」とは具体的にはどういうものかといえば、「翻訳する人間の個人的な解釈を聞き手に押しつけてしまうタイプ」の翻訳である。ジュードという人が男性なのか女性なのかということを翻訳者が勝手に「決めつけて」しまうだけでも、その訳詞は「他の読み方を排除するもの」に変わってしまう。ただし、厄介なことに日本語の場合は登場人物が男性か女性を特定できなければ「自然な言葉」で翻訳することが極めて難しい。それ自体が差別文化だと言ってしまえばそれまでなのだが、どうしても「言葉が変わってくる」からであり、登場人物の「属性」みたいなものを聞き手に感じさせない文体を選択したならばそれこそ「死んだ言葉」でしか翻訳できなくなってしまう。

そんなわけで、結論として、この歌の翻訳はすごく難しかった。以下は、各フレーズをめぐって。

Take a sad song and make it better

最初私はこの部分を「かなしい歌をとりあげて、それをいい歌に変えて行こうじゃないか」と翻訳していた。「make it better」の「it」は、「かなしい歌」のことを指していると考えたのである。そしてそれ自体は、文法的には間違った解釈ではないと思う。

ただ、何度も読んでいるうちに、冒頭の「Take」は「選びとれ」という「強い呼びかけ」であるようにも思えてきた。「Take a sad song」は「今は悲しい歌を聞くべきだ」と言っているわけであり、しかるのち「make it better」すればいい、と言っているのだという風に解釈するのも「アリ」だと思う。この場合の「make it better」は「ものごとをいい方向に変えていけばいい」的な意味になる。

私には「前向きな気持ちになるために中島みゆきを聞く」みたいな時代が長くあったから、落ち込んでる相手に「悲しい歌を聞けばいい」というのはアドバイスとして極めて「的確」であると感じる。ポールという人もミュージシャンである以上、「かなしい歌」の「効用」というものを分かっていなかったはずはない、と思う。だからこの「sad song」という言葉は、必ずしもネガティブなイメージで解釈すべきではないのかもしれない。それを「いい歌に変えろ」という風に翻訳したら、どうしてもネガティブなイメージが生まれてしまうけど。

そんなこんなで、どちらの意味で解釈しても矛盾が生じないような言葉遣いを試訳では選択した。「ちょっとずつでも」に相当するような言葉は原詞の中には書かれていないが、意訳の範囲として許容されたいと思う。

Remember to let her into your heart

直訳は「彼女を君の心に入ってこさせること、それを覚えておけ」。…英語の国の人たちは本当に日本語だとありえないような言い回しで喋っているのだなということが痛感されるフレーズである。これが「文化の違い」ということなのだな。

その言わんとしていることを「日本語らしい言葉」に置き換えるなら、要は「彼女を自分の心に迎え入れろ」「受け入れろ」「それが大事だ忘れるな」と言っているわけである。そして「相手を自分の心に受け入れる」という受動的な行為は、日本語では一般的に「心を開く」という能動的な言葉で表現される。そんなわけで、上のような訳詞になった。

…中学生の頃に翻訳しようとして挫折したのも、無理もなかったと思う。難しい単語はほとんど使われていない歌なのだけど。

You were made to go out and get her

直訳は「お前は出て行って彼女を手に入れるように作られたのだ」。…歌い手は博士でジュードはロボットなのではないかといったようなことまで、解釈の幅に含めておかねばならないような気がしてきてしまう言い回しだが、これまた英語では別に「不自然」な言い方ではない。「うまくいくに決まってるよ」とか、「そうしなくちゃダメだよ」ぐらいのニュアンスで、英語圏の人はこういう言葉を使うのである。使うらしい。

それぐらいのカジュアルな言い方であることを考慮するなら、「お前はそのために生まれてきた」とまで言わせるのは「訳しすぎ」になるのかもしれない。けれども原詞の「You were made to〜」という言い方の「げんしゅくな響き」は、何となく残しておきたい気が私はしたのだった。

ちなみに「get her」の「get」をどういう言葉で翻訳すればいいのかということは、本当に悩ましい。90年代以降「ゲットする」という言葉は既に「日本語の一部」になっているけれど、そういう言葉が生まれなければならなかったのは、直接「get」に相当するような言葉が元々の日本語の中に存在していなかったからなのだろうな。「モノにする」=「自分のものにする」的な言い方は昔からあるけれど、私にはこれがすごく「イヤな言い方」であるように思える。人間をモノ扱いしたら、いかんでしょう。しかもそれを「自分の」モノであると宣言するなんて、なおさらいかんでしょう。でも他に言い方が思いつかなかったもので、試訳では結局それを使っている。忸怩なことである。

The minute you let her under your skin

「under your skin」は「あなたの肌の下」なので、最初は「彼女と体を密着させる時」とか「彼女を抱きしめる時」とかいった意味だろうかと私も思ったのだったが、そうではないらしい。この「under」は「皮膚の内側」という意味なのである。そして「under someone's skin」という言い回しは、英語では実に微妙なニュアンスのもとに、いろいろな形で使われているらしい。

たとえば「He gets under my skin (彼は私の肌の下に入り込む)」と言った場合、「あいつめっちゃむかつく」「カンに触る」という意味になる。キライなやつがエイリアン的に自分の体内に侵入してきて肌の下でモゾモゾしている様が目の前に浮かんでくるような、えげつない表現である。けれども「She has gotten under his skin (彼女は彼氏の肌の下に入ってしまった)」と言った場合、これは「彼氏は身も心も彼女に夢中」という意味になる。相手のことが好きで仕方なくてついにはその相手に「体を乗っ取られた」ようなさまになっていることの表現なのである。要は「肌の下に入り込んでくるその相手」が「好きな人」か「キライな人」かの違いによって、意味するところが全然変わってくる。

この歌の場合、ジュードにとってのその相手が「好きな人」であるのか「キライな人」であるのかは、別に歌詞の中で明示されているわけではない。ただポールは、その相手のことを自分の肌の下に受け入れればいいのだ、とジュードに向かって語りかけている。だからこの部分の訳語は「受け入れる」で構わないと思う。

ちなみにここに出てくる「her (彼女)」は「麻薬」のメタファーで、「let her under your skin」は「その麻薬を皮下注射しろ」という意味なのだ、といった風に即物的に解釈する向きもあるらしいのだが、ポールという人が麻薬の経験者でかつそれが皮下注射される時の感覚を実際に「知っている」人であった場合、比喩表現としてそういう言い方が選択されるのは、意識的にであれ無意識的であれ、充分に「ありうること」だと私も思う。しかしだからといって「麻薬を打て」というのがこの歌のメッセージであるといったように強弁するのは、この歌を真面目に聞く気持ちを初めから持っていない人だけがやることだろう。そういうことを言っているとした場合、ポールは「麻薬を皮下注射する時みたいな感じで」彼女のことを自分の中に迎え入れろ、と言っているに「すぎない」のである。血液に麻薬が溶けてゆくのと同じような感覚で、彼女の存在が自分の全身を満たして行くのを味わえばいい、と言っているだけにすぎない。「麻薬」と言うからオドロオドロしく響くけど、もしもそれが「アルコール」だったとした場合、ヤバい歌詞でもアブない歌詞でも何でもないと思いません?「フツーの比喩表現」に「すぎない」のである。それなのに歌詞の言葉の中に「ドラッグの気配」を感じ取っただけで「考えるのをやめてしまう」人たちというのは、つまるところドラッグというものが何なのかを実際には全然「知らない」人たちなのだろうな、としか思えない。

まあ、私も全然知らないんですけどね。

And anytime you feel the pain, hey Jude, refrain

ここの訳し方は無意識のうちに「母に捧げるバラード」の影響を受けてしまったかもしれない気がしているのだが、それはまあ余談。「refrain」は「控える, 断つ, やめる, 我慢する」みたいな意味だが、「ガマンしろ」だとまるで相手に無理難題を押しつけてるみたいである。「何もしなくていい」という「相手の心理的負担を軽減する言い方」の方がここではふさわしいと思う。

Nah nah nah nah nah nah nah nah nah

別に「な?な?な?」と言ってるわけではないし英語の「Nah nah」にもとよりそんな意味はないのだが、何となく「落ち着かない」ので「な?な?な?」を入れといた。入れない方が良かったかもしれないけど。ちなみにザ·バンドの「Old Dixie Down」は「ナ、ナ、ナ」と聞こえるのに歌詞表記は「La la la」だが、この歌の場合は「ラ、ラ、ラ」と聞こえるのに表記が「Nah nah nah」である。うーむ。何を信じればいいのだろう。

The movement you need is on your shoulder

直訳は「君の必要としている動きは君の肩にかかっている」。ポールは初めてこの歌をジョンに聞かせた時、この部分の歌詞が「自分の飼ってるオウムのことを歌っているみたいでヘンだから」変えた方がいいかな、と言ったらしいのだが(言われてもあんまりピンと来ないのだが)、ジョンは「何言ってるんだ。ここが一番いい歌詞じゃないか。おれにはちゃんと伝わってくるよ」と言ってくれたらしい。その時のことが思い出されて、今でもこのフレーズを歌う時にはジワッとしたものが込み上げてしまうのだ、ということが、ポールのインタビューでは語られていた。思い入れたっぷりだった「レボリューション」がこの歌のB面にされてしまったという経緯はあったものの、ジョンはこの歌のことをハッキリと「認めて」いたし、また「愛して」もいたらしい。


Hey Jude (De Dannan)

歌詞そのものは上記のような内容になっているということの上で、この歌は1968年、ジョン·レノンがそれまでの結婚相手だったシンシアさんと離婚した際に、当時5歳だったジョンとシンシアさんとの息子であるジュリアン君を励ましたいという気持ちで、ポールが作った歌だったということが伝えられている。ポールは実際、ジョンがいなくなった家で二人で暮らすことになったその親子を「お見舞い」に行くためにクルマを走らせていた道すがらで、この歌の最初のフレーズを思いついたのだという。しかしながらジュリアン君自身はこの歌が自分のために作られたのだということをティーンエイジャーになるまでずっと知らずにいて、ポール本人の口からそれを伝えられたのは、二人がアメリカのホテルで偶然出会った1987年のことだったという。この歌についてジョン·レノンは、亡くなる直前に以下のようなコメントを残している。

He said it was written about Julian, my child. He knew I was splitting with Cyn and leaving Julian. He was driving over to say hi to Julian. He'd been like an uncle to him. You know, Paul was always good with kids. And so he came up with Hey Jude.
あいつはこの曲が、ぼくの子どものジュリアンのことを書いた曲だって言ってた。あいつはぼくがシンと別れてジュリアンから離れて行こうとしてたことを、知ってたんだな。あいつはクルマでジュリアンのところに通って、顔を出してやってた。ジュリアンにとっては、おじさんみたいな存在だった。知ってるかい。ポールってやつはいつも子どもの扱いがうまかったんだ。そんな中であいつは「ヘイ、ジュード」を思いついたんだな。

But I always heard it as a song to me. If you think about it... Yoko's just come into the picture. He's saying, 'Hey, Jude – hey, John.' I know I'm sounding like one of those fans who reads things into it, but you can hear it as a song to me. The words 'go out and get her' – subconsciously he was saying, Go ahead, leave me. On a conscious level, he didn't want me to go ahead. The angel in him was saying, 'Bless you.' The devil in him didn't like it at all because he didn't want to lose his partner.
でもぼくは聞くたびに、これが自分に向けられた歌なんじゃないかって気がしたんだよ。こんな風に考えられないかい。歌詞の中にヨーコがいるとして、それであいつが言うんだ。「ヘイ、ジュード/ヘイ、ジョン」って。わかってるよ。何か深読みしたがるファンと同じような話だけどさ。でもぼくに向かって歌ってるようにも聞こえるんだ。「go out and get her」ってところでは、無意識の部分であいつは「長年連れ添ったおれを捨ててヨーコを選ぶがいい(意訳)」って言ってたんじゃないのか。意識的な部分では、あいつはぼくに「行っちまえ」って思ってたわけじゃないんだけど。あいつの中の天使がぼくに向かって「おめでとう」って言ってみせてても、あいつの中の悪魔は全然そう思ってない。あいつは自分のパートナーであるぼくを失いたくないと思ってたから。


Hey Jude (Marta Kubišová)

当時のチェコスロバキアにおいて「人間の顔をした社会主義」というスローガンのもとに進められていた政治改革運動-「プラハの春」-が、ソ連軍の戦車部隊の侵攻によって踏みにじられたのは、この歌がイギリスで発売される10日前の1968年8月20日のことだった。当時27歳だったチェコのアイドル歌手、マルタ·グビショヴァは、西側のラジオ局からの電波を通じて「ヘイ·ジュード」と出会い、友人が書いた密かな抵抗のメッセージの込められたチェコ語の歌詞でそれを歌って空前の大ヒットを博するのだが、それが当局の目にとまるところとなり、弾圧された彼女は人前で歌うあらゆる権利を剥奪されてしまう。「ビロード革命」によって親ソ傀儡政権が打倒され、彼女が再びステージに立つことができたのは、20年後の1989年のことだった。

「もうひとつのヘイ·ジュード」と呼ばれるこのエピソードは、NHKの特集や高校の英語教科書で取りあげられてきた経過から、とりわけ日本では有名になっている。この人の歌ったチェコ語の歌詞もできることならぜひ訳出したいと思ったのだが、内容的には完全に「違う歌」になっていることもあり、やるとするなら回を改めて取り組むことにしたい。チェコ語についてはそれがどんな言葉なのかも知らない状態だから、いつになるかは全然わからないのだけど。ではまたいずれ。


=楽曲データ=
Recorded: 29-31 July, 1 August 1968
Released: 30 August 1968 (UK), 26 August 1968 (US)

Paul McCartney: vocals, piano, bass
John Lennon: backing vocals, acoustic guitar
George Harrison: backing vocals, electric guitar
Ringo Starr: backing vocals, drums, tambourine
Uncredited: 10 violins, 3 violas, 3 cellos, 2 double basses, 2 flutes, 2 clarinets, 1 bass clarinet, 1 bassoon, 1 contrabassoon, 4 trumpets, 2 horns, 4 trombones, 1 percussion

Key: F