華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Never Say Goodbye もしくはおおーおべーーーいびべいびべいびーぶるー (1974. Bob Dylan)

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Never Say Goodbye

英語原詞はこちら


Twilight on the frozen lake
North wind about to break
On footprints in the snow
Silence down below

凍った湖の上に
夕暮れの明かり。
雪の上の足跡を
北風がこすってゆこうとしている。
空気の底には
沈黙が横たわっている。


You’re beautiful beyond words
You’re beautiful to me
You can make me cry
Never say goodbye

きみは言葉にできないほど美しい。
ぼくにとってきみは美しい。
きみはぼくを
泣かせることができるんだってことを
おぼえておいてほしい。
さよならだけは言わないで。


Time is all I have to give
You can have it if you choose
With me you can live
Never say goodbye

ぼくが明け渡さなくちゃいけないのは
時間だけだ。
もしきみがほしいなら
とっておいてくれてかまわない。
ぼくといっしょならきみは
生きてゆくことができる
はずだと思うよ。
さよならだけは言わないで。


My dreams are made of iron and steel
With a big bouquet
Of roses hanging down
From the heavens to the ground

ぼくの夢は鉄とハガネでできていて
大きなバラの花束といっしょに
ぶらさがっているんだ。
天国から地上まで。


The crashing waves roll over me
As I stand upon the sand
Wait for you to come
And grab hold of my hand

砂の上に立って
君を待っているぼくを
砕ける波が突き転ばす。
そして不意にぼくの手を握りしめる。


Oh, baby, baby, baby blue
You’ll change your last name, too
You’ve turned your hair to brown
Love to see it hangin’ down

ああベイビー、ベイビー、ベイビー·ブルー
きみは名字も
変えてしまおうとしている。
髪の色を
茶色にしたんだね。
それがたなびいているのを
いつまでも見ていたいと思う。

=翻訳をめぐって=

ディランの曲の中では一番好きかもしれないとずっと思ってきた曲。ずっと思ってきたんなら素直に一番好きだと言えばいいじゃないかと、そう書いてから自分で思った。確かにその通りだと思う。一番好きな曲である。20年もそう思ってきた以上、これから先にそれが変わることは多分もうない。

上に訳出したのは「プラネット·ウェイヴス」の歌詞カードに書かれている通りの歌詞なのだけど、実際には違った歌詞で歌われている。「Time is all I have to give〜」で始まる二番の歌詞が丸ごと歌われていないし、他の部分も所々変わっている。聞いた通りを書き起こしている海外サイトを参照するなら、実際に歌われているのはこんな歌詞である。

Never Say Goodbye (Recorded Version)

英語原詞はこちら


Twilight on the frozen lake
North wind about to break
On footprints in the snow
Silence down below

凍った湖の上に
夕暮れの明かり。
雪の上の足跡を
北風がこすってゆこうとしている。
空気の底には
沈黙が横たわっている。


You’re beautiful beyond words
You’re beautiful to me
You can make me cry
Never say goodbye

きみは言葉にできないほど美しい。
ぼくにとってきみは美しい。
きみはぼくを
泣かせることができるんだってことを
おぼえておいてほしい。
さよならだけは言わないで。


Because my dreams are made of iron and steel
With a big bouquet
Of roses hanging down
From the heavens to the ground

だってぼくの夢は
鉄とハガネでできていて
大きなバラの花束といっしょに
ぶらさがっているんだから。
天国から地上まで。


The crashing waves roll over me
As I stand upon the sand
Wait for you to come
Grab hold of my hand

砂の上に立って
きみを待っているぼくを
砕ける波が突き転ばす。
ぼくの手を握りしめてほしい。


Oh, baby, baby, baby blue
You changed your last name, too
You’ve turned your hair to brown
Love to see it hangin’ down

ああベイビー、ベイビー、ベイビー·ブルー
きみは名字まで変えてしまった。
髪の色を
茶色にしたんだね。
それがたなびいているのを
いつまでも見ていたいと思う。

90年代の歌詞カードに載っていた和訳では、「iron and steel」の部分が「鉄と蒸気」と訳されていた。歌詞を文字起こしした人が「steel」を「steam」と聞き間違えたのだと思われる。なお、ここに出てくる「鉄のイメージ」は、ディランの育ったミネソタ州が「炭鉱の街」だったことと結びついているのではないかという考察が、海外サイトではなされていた。そうであるならば、この曲はディランの中で極めて「古い思い出」と結びついた歌になっているのだと思う。

「The crashing waves roll over me〜」の部分の歌詞カードの和訳は、「ヘイ、くだける波よ、ぼくをまきこんでしまえ/ 砂の上に立って/ きみがやってきて/ ぼくの手をにぎりしめるのを待っているぼくを」となっているのだが、波に向かって呼びかけているとした場合「The」はつけないだろうから、前半部分は誤訳だと思う。一方で後半部分の「grab」の主語が「波」なのか「you」なのかは、確かに聞いただけでは分かりにくい。歌詞カードの歌詞では「grab」の前に「and」がついているから、主語は切り替わっていないものと判断して「波」を主語にした。一方で実際に歌われている歌詞では「and」が入っていないから、主語を「you」に変えてある。でも、その「どっちともとれるあいまいさ」まで含めて、この曲の歌詞になっているのだと思う。



「プラネット·ウェイヴス」のアルバムジャケットは、いつも私に小学校の遠足で行った明日香の橘寺の「二面石」を思い起こさせたものだった。聖徳太子が生まれたところと伝えられている寺である。ではまたいずれ。


=楽曲データ=
Released: 1974.1.17.
Key: D→G→Chaos