華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Everything's Alright もしくはジーザス·クライスト·スーパースター#5 (1970. Tim Rice)

Jesus Christ Superstar


Everything's Alright

Everything's Alright

きっとだいじょうぶ

英語原詞はこちら


[Mary Magdalene:]
Try not to get worried, try not to turn on to
Problems that upset you, oh.
Don't you know
Everything's alright, yes, everything's fine.
And we want you to sleep well tonight.
Let the world turn without you tonight.
If we try, we'll get by, so forget all about us tonight

[マグダラのマリア]
落ち込まないようにしてください。
あなたを苦しめていることの方ばかり
見ないようにしてください。
わかりませんか。
きっとだいじょうぶなんです。
何でもうまく行ってるんです。
今夜はぐっすり眠ってください。
みんなそう願っています
一晩ぐらいはあなたなしでも
世界はちゃんと回ります。
がんばりさえすれば
私たちは何とかやっていけます。
だから今夜ぐらいは
私たちのことなんて忘れてください。


[Apostles' Wives:]
Everything's alright, yes, everything's alright, yes.

[使徒の連れ合いの女性たち]
何でもうまく行くよ。そうさ。
ぜんぶだいじょうぶ。そうですとも。


[Mary Magdalene:]
Sleep and I shall soothe you, calm you, and anoint you.
Myrrh for your hot forehead, oh.
Then you'll feel
Everything's alright, yes, everything's fine.
And it's cool, and the ointment's sweet
For the fire in your head and feet.
Close your eyes, close your eyes
And relax, think of nothing tonight.

[マグダラのマリア]
眠ってください。
わたしがそばにいてさしあげます。
穏やかな気持ちに
なってもらえるようにします。
そして香油を塗らせてもらいます。
熱くなった額を冷ましてくれる
ミルラの没薬ですよ。
そしたらきっと
すべてはだいじょうぶなんだって
何でもうまく行くんだって
気持ちになれると思います。
頭も足も熱くなってるから
冷たくてさっぱりするでしょう。
そして香油が気持ちいいでしょう。
目を閉じてください。
目を閉じてください。
そして気持ちを楽にしてください。
今夜は何も
考えないようにしてください。


[Apostles' Wives:]
Everything's alright, yes, everything's alright, yes.

[使徒の連れ合いの女性たち]
何でもうまく行くよ。そうさ。
ぜんぶだいじょうぶ。そうですとも。


[Judas:]
Woman your fine ointment, brand new and expensive
Should have been saved for the poor.
Why has it been wasted? We could have raised maybe
Three hundred silver pieces or more.
People who are hungry, people who are starving
They matter more than your feet and hair!

[ユダ]
オンナよ、その新しくて高そうな香油、
貧しい人たちのために
とっとくべきだったんじゃないのか?
何でそんなムダなことがやれるんだ。
カネに換えれば銀貨300枚か
それ以上にもなってただろうによ。
飢えた人たちや渇いた人たちは
あんたのアシやらカミノケやらより
よっぽど大変なものを抱えてるんだぜ!


[Mary Magdalene:]
Try not to get worried, try not to turn on to
Problems that upset you, oh.
Don't you know

[マグダラのマリア](ユダに)
悪いように考えないでください。
あなたを苦しめていることの方ばかり
見ないようにしてください。
わかりませんか。


[Apostles' Wives and Mary:]
Everything's alright, yes, everything's alright, yes.

[使徒の連れ合いの女性たちとマリア]
何でもうまく行くよ。そうさ。
ぜんぶだいじょうぶ。そうですとも。


[Jesus:]
Surely you're not saying we have the resources
To save the poor from their lot?
There will be poor always, pathetically struggling.
Look at the good things you've got.
Think while you still have me!
Move while you still see me!
You'll be lost, and you'll be sorry when I'm gone.

[イエス]
貧しい人びとを
その運命から救い出せるほどの蓄えが
われわれにあるわけでもないことは
おまえもわかったうえで
言っていることだろう。
貧しい人びとはこれからも
いつの時代にだっているだろう。
痛ましいぐらいにその境遇と
戦いながら生きてゆく人びとは。
自分は今までに
何をつかみとってきたのかということを
しっかりと見ておくんだ。
わたしと一緒にいることが
できているあいだに考えるんだ!
おまえがその目でわたしのことを
見ることができているあいだに
行動するんだ!
おまえには敗北が待っている。
そしてわたしがいなくなったとき
おまえはきっと悲しくなることだろう。


[Mary Magdalene:]
Sleep and I shall soothe you, calm you and anoint you.
Myrrh for your hot forehead/
Then you'll feel
Everything's alright, yes, everything's fine.
And it's cool and the ointment's sweet
For the fire in your head and feet.
Close your eyes, close your eyes, and relax
Think of nothing tonight.

[マグダラのマリア]
眠ってください。
わたしがそばにいてさしあげます。
穏やかな気持ちに
なってもらえるようにします。
そして香油を塗らせてもらいます。
熱くなった額を冷ましてくれる
ミルラの没薬ですよ。
そしたらきっと
すべてはだいじょうぶなんだって
何でもうまく行くんだって
気持ちになれると思います。
頭も足も熱くなってるから
冷たくてさっぱりするでしょう。
そして香油が気持ちいいでしょう。
目を閉じてください。
目を閉じてください。
そして気持ちを楽にしてください。
今夜は何も
考えないようにしてください。


[Apostles' Wives:]
Everything's alright, yes, everything's alright, yes.

[使徒の連れ合いの女性たち]
何でもうまく行くよ。そうさ。
ぜんぶだいじょうぶ。そうですとも。


[Mary Magdalene:]
Close your eyes, close your eyes, and relax

[マグダラのマリア]
目を閉じてください。
目を閉じてください。
そして気持ちを楽にしてください。


Jesus Christ Superstar 1973. 今回は17:30〜21:20

=翻訳をめぐって=

nagi1995.hatenablog.com
大昔に初めて聞いた時から、ボブ·マーリィのこの曲とすごく重なる印象を持った歌だと感じていた。この歌のマリアさんやトレンチタウンのボブ·マーリィのように、何の根拠もなくっても「大丈夫」「うまく行く」と確信を持って言いきれる気持ちというものをおそらく「信仰」と呼ぶのだろうし、そういう気持ちを持って生きることのできている人たちというのは、間違いなく「幸せな」人たちである。

ユダもかつてはそれと同じ「信仰」を持つことができていたのかもしれないけれど、今ではそれを持てなくなってしまっている。そしてそれは明らかに「彼のせい」ではない。その意味でユダという人は、ものすごく「かわいそうな」登場人物なのだ。

この歌の中でのイエスのユダへの向き合い方は、「自分を裏切ろうとしている邪悪な相手」に対するそれではなく、その「かわいそうな相手」に対する向き合い方になっていると思う。ユダのことを「かわいそうだ」と思う気持ちを間違いなくイエスは持っているし、その意味ではユダという人間のことを「一番よくわかっている」のはやっぱりイエスなのである。そしてイエスから強い言葉を向けられた時のユダの表情は、彼自身の方でもそれを痛いぐらいに感じていることを、物語っていると思う。でも、二人にどうできるだろうか。結局どうにもできなかったということしか、史実は教えていない。

聖書の中のイエスはまるでユダから「裏切ってほしいと思っている」かのような言動を至るところでとっていて、すごく理解に苦しむのだが、この映画の中でのイエスは相当に「真っ直ぐ」ユダと向き合っていると思う。それでもやっぱりイエスは、ユダが必ず裏切るのだということ、運命は変えられないのだということを「知って」いる。なぜ「知って」いるのかそれは知らないのだけど、「わたしと一緒にいることができている間に考えろ」という言葉には「言えることは全部言っておく」という思いがみなぎっていると思う。

その「思い」にユダはどう「応える」のだろうか。実は私はまだ知らない。この映画は10代の頃につけっぱなしのテレビでチラッと見たことがあっただけで、筋を完全に忘れてしまっているからである。だから現在私はこの映画を「翻訳しながら」見進めているわけであって、「翻訳が済んだところまでしか」まだ見ていない。全部の翻訳が終わった時に最初から通して見直すことを楽しみにしているのだけれど、なかなかにこれは、スリリングな作業である。

筋を知っているみなさんにおかれましては、どうか先走って私に教えてくれたりしないように、ご注意とお心遣いをよろしくお願いします。

Everything's alright, yes, everything's alright, yes.

イエスが「yes」って言われたらややこしいことになるのではないだろうかと私は子どもの頃から気になっていたのだけれど、「yes」という言葉が使われている英語圏では「イエス」は「ジーザス」だから、ややこしいことにはならないのである。何をしょーもないことをエラそな顔して書いているのだろうか私。

Sleep and I shall soothe you, calm you, and anoint you.
Myrrh for your hot forehead, oh.
Then you'll feel

十字架にかけられる日を目前にしたイエスがマリアという女性(だったかどうかも資料によってまちまちなのだが)から「ナルドの香油」を注がれたというエピソードは、旧約聖書の四福音書のすべてに載っている。弟子や周りの人たちはみんなその女性の「エキセントリックな振る舞い」に引いてしまうのだが、イエスだけはそれが自分の「死化粧」になるのだということが分かっていた、というエピソードである。でも、それだけでなくもっといろいろ何らかの「深い意味」が込められた逸話だったから、「わざわざ」語り継がれてきたのだろうな、といったような印象を受ける。それが何かは知らないのだが。

それで「ナルドの香油」というのは何とまあヒマラヤでしか採れない植物の根っこをオリーブ油に漬け込んだものだったのだそうで、当時のパレスチナで「高かった」のは当然である。「銀貨300枚になったはず」というユダのイヤミのくだりは「ヨハネ福音書」からのほぼ丸写しになっている。「ミルラ」というのはミイラ作りに使われたことからその語源にもなっている薬効を持ったゴム樹脂で、これも「ナルドの香油」の成分の一部になっていたのだとのこと。どんな香りだったのかというと、しかし、理科室みたいな匂いだったらしい。

Surely you're not saying we have the resources
To save the poor from their lot?

このフレーズでイエスがユダに何を言おうとしているのかといえば、おそらく「おまえはヤカラを言っているだけだ」みたいなことなのではないかと思う。関西方言でしかうまく表現できなくてすみません。

Think while you still have me!

直訳は「おまえがわたしを所有している間に考えろ」。日本語にはどうしてもなじまない言い方なので「一緒にいる間に〜」的な訳し方をしたが、しかし実際の語感としてはもっともっと「強い」ものなのだと思う。「一緒にいる」だけなら「何となく」でも成立するが、「持つ/所有する」というのは「意志の持続」を抜きにしては成立しないことだからである。



というわけでまたいずれ。