華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Police and Thieves もしくはいーろーはーにーほーへーと、ちーりーぬすと!(1977. The Clash)


Police and Thieves

Police and Thieves

英語原詞はこちら


We're going through a tight wind
しっかり固まって行くぞ

Police and thieves in the streets,
oh yeah
Scaring the nation
with their guns and ammunition
Police and thieves in the street,
oh yeah
Fighting the nation
with their guns and ammunition

街頭には
警察の一団と盗賊の一団
おーいぇー
銃と弾丸で
国家をおびやかしている
街頭には
警察の一団と盗賊の一団
おーいぇー
銃と弾丸で
国家と戦っている


From genesis to revelation
The next generation will be, hear me
From genesis to revelation
The next generation will be, hear me
And all the crowd comes in, day by day
No one stops it in any way
All the peacemaker, turn war officer
Hear what I say, he-e-ey

天地創造の時から最後の審判の日まで
次の世代の人間たちはだな
聞けよおい
天地創造の時から最後の審判の日まで
次の世代の人間たちはだな
ちゃんと聞いてるか
ありったけの群衆が押し寄せるぞ
日ごとに日増しにだ
どうしてみたところで
誰にもそれは止められない
すべての平和の代理人は
戦争屋に変わってゆく
おれの言うことをしっかり聞けよ
おいおおおおおいおい


Police and thieves in the streets,
oh yeah
Scaring the nation
with their guns and ammunition
Police and thieves in the street,
oh yeah
Fighting the nation
with their guns and ammunition

街頭には
警察の一団と盗賊の一団
おーいぇー
銃と弾丸で
国家をおびやかしている
街頭には
警察の一団と盗賊の一団
おーいぇー
銃と弾丸で
国家と戦っている


From genesis to revelation
The next generation will be, hear me
Throw it up, throw it up, throw it up, throw it up, throw it up
Oh yeah
Throw it up, throw it up, throw it up, throw it up, throw it up
Oh yeah

天地創造の時から最後の審判の日まで
次の世代の人間たちはだな
聞けよおい
やめだやめだやめだやめだやめだ
おーいぇー
やめだやめだやめだやめだやめだ
おーいぇー


And all the crowd come in, day by day
No one stop it in anyway
All the peacemaker, turn war officer
Hear what I say, he-e-ey

ありったけの群衆が押し寄せるぞ
日ごとに日増しにだ
どうしてみたところで
誰にもそれは止められない
すべての平和の代理人は
戦争屋に変わってゆく
おれの言うことをしっかり聞けよ
おいおおおおおいおい


Police, police, police and thieves,
oh yeah
Police, police, police and thieves,
oh yeah
From genesis-is-is-is-is-is-is-is-is-is,
oh yeah
Police, police, police, police and thieves, oh yeah

警察、警察、警察と盗賊団
おーいぇー
警察、警察、警察と盗賊団
おーいぇー
天地創造の時からからからららららら
おーいぇー
警察、警察、警察と盗賊団
おーいぇー


And I'm scaring, I'm fighting the nation, oh yeah
Shooting, shooting their guns and, guns and ammunition, oh yeah
Oh yeah, police, police, police and thieves, oh yeah
I'm scaring, oh yeah
I'm scaring the nation, police, police, police, police, oh yeah

そんでもっておれは怖いぞ
戦っているのだぞ国家と
おーいぇー
やつらの銃で発砲
やつらの銃が発砲
銃と弾丸
おーいぇー
警察、警察、警察と盗賊団
おーいぇー
おれはびびらせているのだぞ
おーいぇー
国家をそして警察を
警察を警察を警察を
おーいぇー


Here come, here come, here come
The station is bombed, oh yeah
Get out, get out, get out you people
If you don't want to get blown up,
oh yeah
The police, the police and the thieves, oh yeah
You got an extra grand
But you got trapped in the middle of police, police, police
Police, police, police, police
Police, police, police, police
Police, police, police, police
Police, police, police, police

来たぞ来たぞ来たぞ
駅が爆破されたぞ
おーいぇー
逃げろ逃げろ逃げろ諸君
人々よ
吹っ飛ばされたくないならば
おーいぇー
警察、警察、警察と盗賊団
おーいぇー
千ポンドも余計にもらったんだな
でもおまえは警察が張った罠の
ど真ん中だ
警察の、警察の、警察の
警察が、警察が、警察が
警察、警察、警察…



この曲にも、いろいろと私の知らなかった成立過程があったようなので、いつも参照させてもらっている海外サイト「songfacts」から、関係部分を引用して訳出しておきたい。

This song was co-written by Junior Murvin with the legendary reggae producer Lee "Scratch" Perry. At a session at Perry's famous Black Arc studio in Jamaica, Murvin and his backing band The Upsetters were jamming on a version, when out of nowhere lyrics, structure and melody all came together and Perry made the snap decision to record the song in that form that very day. The next day a dub remix and alternative versions were recorded, and by the end of that week the record was released and gaining heavy airplay in Jamaica.
この曲は(ジャマイカのレゲエシンガー)ジュニア·マーヴィンと、伝説的なレゲエプロデューサーだったリー”スクラッチ”ペリーの共作によって誕生した。「ブラック·アーク」というジャマイカにあるペリーの有名なスタジオでのセッションで、マーヴィンとそのバックバンドのジ·アップセッターズとが適当に音を合わせていたところ、どこからともなく歌詞やメロディや曲の構造が生まれてきて、ペリーがその場で録音する決定を下したのだ。翌日にはダブ·リミックスとオルタナティブ·バージョンも録音され、その週の終わりには発売されてジャマイカ中のラジオ局から鳴り響くことになった。

"Police and Thieves" had already become a huge hit in the UK before the British Punk band The Clash made the song even more famous with their cover version on their debut album. Originally recorded simply to fill space, the band were incredibly nervous about being a white rock band covering a reggae song so deeply entrenched in Jamaican roots. In the Westway to the World documentary singer Joe Strummer explained: "We had some brass neck to do that. By all rights they should've said 'ya heathen mon, ya ruined de works of Jah!' But they were hip enough to realize that we'd brought our own music to the party."
クラッシュがそのデビューアルバムでこの曲をさらに有名にするそのずっと前から、イギリスで「Police and Thieves」は大ヒット曲になっていた。収録時間の空きを埋めるような形で録音されたものだとはいえ、クラッシュは自分たちのような白人のロックバンドがジャマイカのルーツと深く結びついたレゲエの曲をカバーするということについて、相当な気の使い方をしていた。2000年に公開されたドキュメンタリー「Westway to the World」の中で、ジョー·ストラマーは以下のように語っている。「ある種の厚かましさがなけりゃ、やれないことだったよな。'ya heathen mon, ya ruined de works of Jah! (異教の徒め、Jahの御業を台無しにしやがって!←訳注: クラッシュのバージョンを聞いたジュニア·マーヴィンの実際のコメントとされている)'と言われたとしても、当然だったと思うよ。でもあの人たちは、おれたちが自分自身の音楽としてあれをやったんだってことを分かってくれたし、そのぐらいヒップな人たちだったわけだ」

"In the way that '60s bands would cover contemporary R&B classics, we covered the latest record from Jamaica," noted guitarist Mick Jones.
「60年代のバンドがその時代におけるリズム&ブルースの古典的な名曲をカバーしてたのと同じような感覚で、おれたちはジャマイカ発の最新レコードをコピーしたんだ」とはギタリストのミック·ジョーンズの言。


Police and Thieves

=翻訳をめぐって=

Police and thieves in the streets

まずは曲名について。「police」はもちろん警察。「thieves」は「通例暴力によらないでこっそり行なう泥棒」を指す「thief」の複数形だと辞書にはある。(robber は人の所有物を奪う強盗で,暴力を行使する場合が多いが,行使しないこともある; burglar や housebreaker は不法に他人の建物に忍び込む強盗)。それでもってこの曲には70年代の段階から「ポリスとこそ泥」という邦題がつけられているわけだけど、その訳し方にはいろんな点で問題があるのではないかと私は思う。

まず第一に「ポリスとこそ泥」と言われると警官と泥棒の「1対1」のやりとりが歌われているかのようなイメージが浮かんでしまうのだが(事実、私はそう思っていた)、ここに描かれているのは複数形の「police」と「thief」による「集団戦」のイメージであり、さらにpoliceの側のみならずthiefの側も「銃と弾丸」で武装している。ここまで侮れない戦闘力を備えた集団を「こそ泥」という蔑称で切り捨てるのは、事実誤認も甚だしいのではないかという感じがする。

この歌の直接の背景をなしているのは、当時のジャマイカにおいて日常化していたギャング同士の抗争とそれに介入する警察との間で繰り広げられていた「市街戦」のイメージであると関係資料にはあるが、そのことを越えて「人間の歴史が続く限り繰り返されるであろう普遍的な争いの姿」みたいなものがこの歌には描かれているのではないかという印象を私は受ける。だって、「From genesis to revelation (天地創造から最後の審判まで。「genesis」は旧約聖書の冒頭をなす「創世記」を指し、「revelation」は新約聖書の末尾に収められている「ヨハネの黙示録」を指している)」と言っているのである。そう考えてみると、この歌に歌われている「thieves」は果たして事実においても「こそ泥的な集団」なのかどうか、極めて疑わしい感じがする。時の権力者というものは、自らに楯突く勢力に対し必ずそんな風に「蔑称」でレッテル張りをおこなって、弾圧を仕掛けてくるものだからである。

あえて一般化して言うならば、この歌に歌われているのは「時の権力者の私兵集団とそれに反旗を翻す武装集団」との間に繰り広げられる「戦い」の有様であり、いつの時代にもそうした「戦い」は「革命」によってのみ、「決着」がつけられてきた。「革命」というのも「いろんな幅」を含んだ言葉ではある。中国の歴史における「易姓革命」や日本のいわゆる「明治維新」がそうだったごとく、今ある権力を打ち倒して自分たちが「新しい権力者」になってやるのだということを当然と心得ている人間たちによって遂行される「革命」もあれば、フランス革命やロシア革命のごとく、「権力」というものの存在しない真に平等な社会を実現しようというところから出発したにも関わらず、結局その内側から「新たな権力」が生み出されることを阻止できずに、「未完」のまま棚上げ状態になっている「革命」も存在している。「権力」というものの存在に対し、あるいは「人間社会に権力というものが存在しているという事実」に対し、人間の歴史はいまだ「勝てて」いないというのが、「現段階」における世界の有様であると、とりあえずは言わざるを得ない。しかしながらこの世に「正義」というものがあるとするなら、それは人間の歴史においては常に、「腐った権力」から苦しめられ、その抑圧をハネ返すために立ち上がった人々の側に、すなわち「革命」の側に存在していたはずではないかと私自身は思っているし、またそう信じたいとも思っている。けれどもそれは飽くまで「私自身の気持ち」にすぎないし、私自身はそういう気持ちからこの歌と向き合っているということを表明するために書いていることであるにすぎない。他の人がどう思うかは、自分の胸に聞いてもらうしかないことだ。

この歌を作ったジュニア·マーヴィンという人は、おそらくは「自分はどちらの立場にも立たない」という気持ちから、「客観的」にこの歌詞を書いたのだと思う。(「どこからともなく浮かんできた」と資料には書かれているわけだが)。「police」のことを「正義の体現者」であるなどとはもちろん思っていないけど、「thieves」のこともやはり「thieves」にしか見えていない。そして両者の「無益な争い」は、キリスト教の世界観が規定する人間の歴史が続く限り、けっきょく永遠に繰り返されることになるのだろう。というニヒリズムを孕んだ詠嘆が、つまるところはこの歌の「メッセージ」になっているのだと思われる。そういうところに「共感」する人もいるのだろうけれど、私はそこには共感しないし、したって仕方がないと思う。

けれどもクラッシュというバンドがこの歌をカバーした時、かれらは紛れもなく、歌詞の中の「thieves」という言葉に「自分たち自身」を重ねて歌っていたのではないかと、私は感じる。それはかれらの歌っていた他の楽曲や、残されているいろいろな発言との関係から見ても、明らかなことだ。そしてそうした「立場性」においてこの歌を聞いたり歌ったりすることは、単に「客観的」な立場からこの歌を聞いたり歌ったりするのとは、全然違った意味を持ってくる。「thieves」という言葉は「thieves」のことを見下している人間の口から吐かれるならば単なる「蔑称」だが、自分たちが社会から「thieves」と呼ばれる存在であることを否定しない人たちによって口にされる場合には、「誇りを伴った自称」にもなりうる言葉なのである。そしてその「thieves」と「police」の争いがこの世の終わりまで繰り返される、というのは、「客観的」な立場の人からしてみれば「いいかげんにしてくれよ」という次元の話にしかなりえないわけだが、「thieves」自身の口からそれが言われる場合には、「たとえそうなったとしても自分たちは最後まで戦い続ける」という「決意」の表明としての意味を持ってくることになる。

いずれにしても、クラッシュの人たちがそれだけ様々な「思い」を重ねていたはずの「thieves」という言葉が、「こそ泥」などというそれを翻訳した人間の人間性までが透けて見えるような日本語に置き換えられてしまうのはあんまりなのではないかという気持ちから、例によってこんなに長ったらしい文章を書く羽目とは相成った。「盗賊の一団」という自分の訳し方がそれと比べて大して素晴らしいものだとも思っているわけではないけれど、一応この訳し方には遠い昔に大好きだったブルーハーツの「夜の盗賊団」という歌の内容がエコーしているのだということは、付記しておきたい。


夜の盗賊団

We're going through a tight wind

ジョー·ストラマーによる冒頭のこの「台詞」は、ラモーンズの「Blitzkrieg Bop」という歌の一節で、ニューヨークという地で「パンクというムーブメント」を作り出した「先駆者」であるこのバンドに対する、オマージュとしての気持ちが込められているのだとのこと。まさかこんな形でラモーンズの名前が当ブログ初登場することになるとは思っていなかったな。長年、どういう向き合い方をすればいいのか分からなかったバンドではあったのだけど、いよいよ取りあげるしかない時期に来ているということなのかな。

字面を見た限りでは「強い風の中を進もう」みたいな意味かと思ったのだが、「tight wind」の「wind」の発音は「ワインド」であり、「きつく結びつける」という意味である。ここでは「隊列を乱さずに進むぞ」的な、いくぶん軍隊を連想させる言葉遣いになっている。

Fighting the nation
with their guns and ammunition

「Fighting the nation」は「Fight the nation (国家と戦う)」というフレーズの動名詞化なので「国家との戦い」。「fight」という単語は独特な使われ方をする他動詞でもあり、そういう文法的なことが全然わからなかった10代の頃には、「国家よ戦おう」という意味だろうかとか、いろいろ混乱させられていたものだった。現在分詞が命令形で使われることはあり得ないのだということだけでも、当時の自分に伝えてやることができればと思うが、当時の私はそんな風に専門的な言葉を並べてモノシリぶってみせる今の私のことを、軽蔑するに違いないはずなのである。

しゃーけどお前かて、昔っから似たよーなとこ、あれへんだんちゃんうか?

…誰に向かって何の話をしているのだろう私は。

From genesis to revelation
The next generation will be, hear me

「天地創造の時から最後の審判の日まで、次の世代の人間たちは〜になるであろう」というフレーズなのだが、その「〜」にあたる部分が、実は歌詞の他の部分のどこを見渡してみても、書かれていない。「hear me (私の言うことを聞きなさい)」という歌詞で遮られて、尻切れトンボになっている。狐につままれたような気がする歌詞である。

The next generation will be, hear me
And all the crowd comes in, day by day
No one stops it in any way
All the peacemaker, turn war officer

「peacemaker」というのは直訳するなら「平和を作る人」だが、辞書に載っているのは「調停者」というウサン臭い響きの訳語である。まあ、英語表現としてもやっぱり「ウサン臭く響く単語」だということなのだと思う。それが「war officer (戦争を執行する役人)」に変化(turn)する。極めて、よくある話ではある。

「peacemaker」の後にコンマが入っている理由は、よく分からない。「peacemakerよ、war officerに変われ」という「命令形の文章」になっている幅も、ないではない。だとしてもまあ、大した違いではないと思う。

「all the crowd comes in」というのは「Fighting the nation」、すなわち国家との戦いに参加する群衆(crowd)の数は日増しに増えてその勢いは誰にも止められない、ということを歌っているのだろうけれど、それを「指導」する「peacemaker」は結局新しい「war officer」に変わるだけだ、という、以前に取りあげた「Won't Get Fooled Again」的な「諦念」が、恐らくはこの歌の「結論」になっているのだろう。違った読み方もできると思うけど、わざわざ違う読み方をしてまで擁護してやる値打ちがあるほど「大した歌」だとは実は私自身、あんまり思っていない。そしてこの歌詞に使われている「crowd」という言葉には「顔がない」としか思えないわけで、そこがどうしても私には、カチンと来てしまう。「大衆蔑視」の影を感じるからである。

Throw it up, throw it up, throw it up, throw it up, throw it up

少年時代の私の耳に「ちょいなちょいな」としか聞こえていなかったこのフレーズは、「Throw it up」と言っていたのだな。「Throw up」は「放り投げる/嘔吐する/放棄する/デッチあげる/チャンスを無にする」等々の意味。間に「it」が挟まるので、このフレーズは「それをThrow upしろ」という一個の「命令形の文章」を形成していることになる。「嘔吐しろ」とか「チャンスを無にしろ」とか言っているとも思えないので、ここは「やめだやめだ」みたいな形で翻訳しておくのが適当と言えよう。こんな風に半分ムキになってまで細かいことを書くのは、昔の私みたいな中高生が藁にもすがるような気持ちでこの記事を読んでくれていないとも限らないわけだし、むしろそういう人たちにこそ読んでほしいと思っているからである。

I'm scaring, oh yeah
I'm scaring the nation

「scare」は「自動詞にも他動詞にもなりうる言葉」だと辞書にはある。つまり「I'm scaring」は「私は怖い」とも「私が怖がらせている」とも「どちらにも解釈できるフレーズ」になるわけで、事実「I'm scaring」をGoogle翻訳にかけてみると「怖いよ」と翻訳されてしまう。けれども普通「怖い」と言いたい時には「I'm scared」という受動態の表現が使われるようなので、「I'm scaring」は「私は国家を恐れさせている」という他動詞としての意味で解釈するのが、文脈的に考えても「正解」だと思う。考えてみれば日本語で「私は怖い」というのも、「私は恐怖を感じている」というのと「私は怖い人間だ」というのとの「二通りの意味」を持ったフレーズであるわけだが、それぞれの文脈において解釈される限り「勘違い」なんて滅多に起こらないのである。

…ジャマイカやイギリスの街角でこの歌に触れていたレゲエでパンクな少年たちがいちいちそんなことを「ややこしく考えて」聞いていたとはとても思えないわけだし、もしもかれらがこのブログの存在を知ったなら「何でそんなにややこしく考える必要があるのさ」と笑うことだろうが、それがなぜ「ややこしくない」のかということを「日本語で」私に説明してくれようとしたならば、かれらだってやはり「ややこしい思い」を山ほど経験せざるを得ないことになるはずなのだ。「言葉の壁を越える」というのは「そういうこと」なのであって、主人公は要するに自分が恐怖を感じているのか相手に恐怖を与えているのかという「結論」だけに安易に飛びつこうという姿勢は、この場合、違うのではないかと私は思う。

結果より過程が大事
「カルピス」と
「冷めてしまったホットカルピス」


ー枡野浩一短歌集
「ハッピーロンリーウォーリーソング」より

…いや、たとえばとたとえたものが本筋をいっそうわかりにくくしているドツボに私自身がハマってしまいつつあるではないかと思わずにはいられないわけだけど、とにかくこの「I'm scaring」に関しては「怖いぞ!」と言っているとだけシンプルに解釈しておくのが一番いいのではないだろうか。「俺は怖いぞ」と相手のことを威嚇しておきながらそのじつ内心では自分自身も恐怖に震えているといったようなことも人間社会ではいくらでも起こりうることなわけで、そういう複雑な心理のアヤみたいなものを言葉にされたフレーズだけから分かったような顔して解説してみせるなんて愚かなことだとあなたは思わないだろうか。私は思う。というわけでこの項目は以上にとどめる。

Shooting, shooting their guns

これも「やつらの銃が火を吹いている」という風にも「やつらの銃を奪って撃ちまくっている」という風にも、どちらにも解釈できるフレーズなのである。私には、決めつけられない。両方書いたから勘弁してほしい。

The station is bombed, oh yeah

後半のアドリブ的な歌詞は全部クラッシュが後から勝手にくっつけたものなのだけど、この「駅が爆破される情景」には当時イギリス本土で活発に活動していたIRAの皆さんの爆弾テロのイメージが重ねられているのだろうな。

You got an extra grand
But you got trapped in the middle of police, police, police

「grand」はアメリカでは千ドル札、イギリスでは千ポンド札のことを指すスラングなのだという。(ユーロになった今でも使われている言葉なのかどうか私は知らない。イギリスがEUを離脱したらその辺のことがどうなるのかはもっと知らない)。そんな大金がお前の手に入るなんてそれはきっと警察の罠だぞ、といった感じの口から出まかせフレーズなのだと思う。よく分からない。

…どうしてクラッシュ関係の記事は毎回毎回こんなに長くなってしまうのだろう。


ダ·カーポ 空からこぼれたStory

他の地方にもあるみたいだけど、私が育った地域には「警ドロ」という遊びがあった。休み時間で放課後であれ、誰かが唐突に人差し指を立てて

警ドロする人この指とまれ
はーやくしないと切っちゃうぞ
ローソク一本きーえた
たーかーやーまーくーずした
ローソクにーほんきーえた

という歌を歌い出す。するとその歌が終わらないうちに必ずその指が参加者の手で鈴なりになる。

参加者があつまると、まず全員が小さい輪を作って、靴を出す。呼びかけた人間がその靴をひとつひとつ指さしながら

いーろーはーにーほーへーと
ちーりーぬすと!

という歌を歌い、「ぬすと!」に当たった人は靴を引いて「盗っ人チーム」の一員となる。それに

はーまーよー探偵!

というフレーズが続き、これが繰り返されて全員が「盗っ人チーム」と「探偵チーム」に分かれ、鬼ごっこ的なゲームが開始される。「警ドロ」なのに「探偵」と「盗っ人」なのである。あと、「いろはにほへと」は理解できるけど、「はまよ」って何のことなのか、さっぱり分からない。そういうことが私は小さい頃から、気になって仕方ない子どもだった。

それで少し大きくなってクラッシュのこの歌を初めて聞いた時に思い出されたのが、その「警ドロ」という遊びだったわけである。うん。

それだけ。

ではまたいずれっ!


=楽曲データ=
Originally Released by Junior Murvin
(1976.5.)
The Clash version: 1977.4.8.
Key: G