華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Revolution Rock もしくは真夏のえぐえぐロック (1979. The Clash)


Revolution Rock

Revolution Rock

英語原詞はこちら


Revolution rock, it is a brand new rock
A bad, bad rock, this here revolution rock

レボリューション·ロックやで。
さらぴんのロックやで。
むちゃむちゃえぐいロックやで。
これが革命ロックちゅーやっちゃで。


Careful how you move, Mac, you dig me in me back
An' I'm so pilled up that I rattle
I have got the sharpest knife, so I cut the biggest slice
But I have no time to do battle

体の動かし方に
気ぃつけた方がええでマック
じぶんおれのこと
背中から刺そうとしてるやろ。
ほんでもっておれは
クスリが決まっててピリピリしてるし
錠剤も腹ん中で
ジャリジャリ言うたあんねん。
おれのナイフはむっちゃ切れんねやで。
じぶんむちゃむちゃ厚切りにしたるで。
せやけど今はじぶんと
やりおーてるヒマはあれへんねん。


Everybody smash up your seats and rock to this
Brand new beat
This here music mash up the nation
This here music cause a sensation
Tell your ma, tell your pa everything's gonna be all right
Can't you feel it? Don't ignore it
Gonna be alright

さてみなさん
イスみたいなモンはツブしてもーて
このさらぴんのビートで
ロックしたって下さいや。
国家転覆の音楽でっせ。
センセーションを巻き起こす音楽でっせ。
お母ちゃんにも言うたってや。
お父ちゃんにも言うたってや。
何でもうまいこと行きまっせ。
わかりません?
シレッと行こーとしたかてあきまへんで。
そらもーうまいこと行きまっせ。


Revolution rock, I am in a state of shock
So bad, bad rock, this here revolution rock
Revolution rock, it is a brand new rock
A bad, bad rock, this here revolution rock

レボリューション·ロックやで。
わたし今アタマ沸いてる感じですわ。
むちゃむちゃえぐいロックやで。
これが革命ロックちゅーやっちゃで。


Careful how you slide, Clyde, all you did was glide
And you poured your beer in me hat
With my good eye on the beat, living on fixation street
And I ain't got no time for that

人をハタこうちゅーよな時には
気ぃつけなあかんでクライド
じぶんのやってきたことみたい
ミミズが這い回るのんと同じやないか。
ほんでじぶんおれの帽子ん中に
ビール入れてくれよったやろ。
いつもの街角で聞こえたあるビートに
人がマジになってるちゅーのに
そんなんになあ
かまってるヒマはあれへんねん。


Everybody smash up your seats and rock to this
Brand new beat
This here music mash up the nation
This here music cause a sensation
Tell your ma, tell your pa everything's gonna be all right
Can't you feel it? Don't ignore it
Gonna be alright

さてみなさん
イスみたいなモンはツブしてもーて
このさらぴんのビートで
ロックしたって下さいや。
国家転覆の音楽でっせ。
センセーションを巻き起こす音楽でっせ。
お母ちゃんにも言うたってや。
お父ちゃんにも言うたってや。
何でもうまいこと行きまっせ。
わかりません?
シレッと行こーとしたかてあきまへんで。
そらもーうまいこと行きまっせ。


Revolution rock
Yeah so, get that cheese grater going
Against the grains
Wearin' me down
Pressure increase
Everybody!

レボリューション·ロック。
ああせやから
そのチーズおろしみたいな楽器
ジャラジャラ言わしたってや。
おれもすり下ろされてヘロヘロですわ。
圧力上昇血圧上昇ですわ。
みなさん。


Everybody smash up your seats and rock to this
Brand new beat
This here music mash up the nation
This here music cause a sensation
Tell your ma, tell your pa everything's gonna be all right
Can't you feel it? Don't ignore it
Gonna be alright

さてみなさん
イスみたいなモンはツブしてもーて
このさらぴんのビートで
ロックしたって下さいや。
国家転覆の音楽でっせ。
センセーションを巻き起こす音楽でっせ。
お母ちゃんにも言うたってや。
お父ちゃんにも言うたってや。
何でもうまいこと行きまっせ。
わかりません?
シレッと行こーとしたかてあきまへんで。
そらもーうまいこと行きまっせ。


Revolution rock,
To the cruellist mobsters in Kingstown,
With the hardest eyes and the coldest tongue
Is your heart so made of rock
That the blood must flow 'round the block?
Are you listening mobsters? Hey!
All people crawl, gotta die
While cart of food goes rolling by
It's food for thought mobsters
Young people shoot their days away
I've seen talent thrown away
On your loan shark
The organ play!

レボリューション·ロック。
キングストンのいっちゃんいかつい
現役のお兄さんがたに
最高にマジな目付きと最高にえぐい喋りで
捧げさしてもらいます。
みなさんの心は石みたいやからちゅーて
血ぃまでその石頭を
よけて流れやんなんよーな仕組みに
なってますのん?
聞いてはります?現役のお兄さんがた。
人間ちゅーのはハイハイから始めて
最後は死んでく仕組みになってますねん。
その間じゅう食べやんなん。
心の糧ちゅーやつですわ。
現役のお兄さんがた。
若い子ぉらは自分の人生
無駄遣いしててねえ。
高利貸しに喰われてもーた才能ちゅーのを
ぎょーさん見てきましたわ。
オルガン行ってみよーか。


And they're dancing to the brand new beat
This here music mash up the nation
This here music cause a sensation
Tell your ma-ma-ma-ma, tell your pa-pa-pa-pa everything's gonna be all right
Can't you feel it? Don't ignore it
Everything's gonna be alright
I say, revolution rocks

みなさんこのでけたてのビートで
踊ってはりますわ。
国家転覆の音楽でっせ。
センセーションを巻き起こす音楽でっせ。
お母ちゃんにも言うたったったってや。
お父ちゃんにも言うたったったってや。
何でもうまいこと行きまっせ。
わかりません?
シレッと行こーとしたかてあきまへんで。
そらもーうまいこと行きまっせ。
レボリューション·ロックや
ちゅーてますねん。


There's that old cheese grater
Rubbing me down
This must be the way out

チーズおろしみたいな楽器の
ごっついのがおまんねん。
わたし完全にすり下ろされてますわ。
さっぱりわやですわ。


Here's the cheap bit
OO la oo la oo la

ベタなやつやらしてもらいましょーか。
うーらうーらうーら。


Any song you want
Playing requests now on the bandstand
El Clash Combo
Paid fifteen dollars a day
Weddings, parties, anything
And Bongo Jazz a speciality

みなさんの聞きたい曲は
何でもリクエストにおこたえして
野外音楽堂でやらしてもらってまっせ。
エル·クラッシュ·コンボ。
結婚式でもパーティでも何でも
1日15ドルでやらしてもろてます。
本職はボンゴジャズですねん。

=翻訳をめぐって=

「関西弁に聞こえてしまった曲に関しては関西弁で翻訳する」というのが、最初は「禁じ手」にしていたのだけど、結局抑えようがなくなってしまったこのブログのスタイルである。その経緯については下の記事を参照されたい。私の耳にはこの歌が昔から「服部緑地野外音楽堂みたいなところで真夏に汗だくになって焼きそばか何か焼いてはるテキ屋のお兄さん」みたいな人の歌ってくれている歌であるかのように響き続けていた。「お父さんにも教えてあげよう」みたいな東京の言葉では、どうしても訳せなかった。
nagi1995.hatenablog.com
この曲はもともとジャマイカのレゲエミュージシャン、ダニー·レイとレボリューショニアーズというグループが、1976年に発表した曲だったとのこと。YouTubeのおかげで初めてオリジナルを聞くことができたが、クラッシュのバージョンと比べてずいぶん「涼しげ」に感じた。前者のバックで鳴いてるのがクマゼミかアブラゼミなら、後者のバックに聞こえているのはツクツクボウシといった感じだ。寒いはずのイギリスで歌ってるクラッシュのバージョンの方が「暑苦しく」聞こえるのは、不思議な話ではある。


Revolution Rock (Danny Ray)

歌詞に関して言うならば、試訳を読んでいただければ分かるように、大して「内容のあること」は歌っていない。セミがシャイシャイ言うてるじわっと暑い日曜日の昼下がりに、浴衣姿で頭にカチワリ載せて団扇片手に国家でも転覆しに行こかい、という至ってのどかな真夏の風物詩を叙情的にスケッチした、それだけの歌であると思う。従って「翻訳をめぐって」の項目など、本当ならいちいちつける方が野暮だと思うのだけど、いろいろ独特な言い回しも多いし、関西弁訳の常としてどうしても「意訳」がちになるので、コメントが必要だと思われる箇所についてだけ、最低限触れておくことにしたい。

  • it is a brand new rock…「さらぴん」は「新しい」という意味。「ロック」を「なまもの」と解する場合には、「とれとれのロック」「手て噛むロック」みたいな訳し方も、可能だったと思う。私のおばあちゃんちは、魚屋だった。
  • A bad, bad rock…この字面を見た瞬間に私の脳裏に蘇ったのが、枝雀師匠の「くっしゃみ講釈」の「えぐえぐーいくっしゃみ」というフレーズだったのだった。「知るか」思わはるか知らんけど。


くっしゃみ講釈

  • Careful how you move, Mac, you dig me in me backブレヒトの喜劇「三文オペラ」の挿入歌「マック·ザ·ナイフ」にインスパイアされた歌詞だとのこと。いずれ訳することもあるかと思う。このあたりの歌詞は、ジョー·ストラマーの自作らしい。「マック」といえば池乃めだかの「熱いコーヒーを淹れてくれんかマック」というネタが思い浮かんでくるわけだが、最近では「吉本」という言葉は口にするのもイヤになっている。
  • An' I'm so pilled up that I rattle…「pilled up」は「クスリが決まっている状態」をさすスラングだとのこと。「rattle」というのはそれで「ガタガタ震えている状態」を言っているとも、あるいは飲んだ錠剤が腹の中でマラカス的に「ザラザラ言っている状態」を言っているとも両方に解釈できると海外サイトに書いてあったもので、「両方」で訳している。ほんまかよ、とも思うのだが。
  • Everybody smash up your seats and rock to this brand new beat…パンクの勃興期、「イスのある劇場」で公演が行われる際には観客がそのイスを破壊して無理やり「踊れるスペース」を作り出そうとする行動が相次ぎ、その現象には「smashing up」という名前がつけられた。このフレーズは観衆に向かって「さてみなさんそれをやりましょー」と浜村淳口調で呼びかけているわけである。今年もやって来ましたウォオルトディズニーワァルドオンアイス。このあたりもジョー·ストラマーのオリジナル歌詞らしい。
  • Careful how you slide, Clyde, all you did was glide…とても訳しにくい歌詞だったのだが、「slide」と「glide」でどうしても韻を踏ませたかったということで、こうした「無理のある言葉遣い」になったのだろう。「slide」は「ひっぱたく」のスラングにもなっているとのことなので「ハタく」と訳したのだが、関西以外でも言うのだろうか。「glide」はここではミミズのごとく「這う」「のたうつ」という意味だと思う。
  • Yeah so, get that cheese grater going against the grains…「cheese grater (チーズのおろし金)」って何のことかと思ったら、ここでは外見が似ている「カバサ」という楽器のことを言っているらしい。ぐるっと取りつけられた金属の粒(grains)に手で圧力をかけて「ジャラッ」と言わせる楽器である。「その勢いでボクのこともツブしてー!」「グチャグチャにしてー!」的な歌詞がアドリブ的に挟まれている。


  • To the cruellist mobsters in Kingstown…「キングストン」はジャマイカの首都。「mobster」は「ギャングの構成員」で、日本語的には特定のヤクザ組織の正式な組員であることを指す「現役」という呼称が一番しっくり来ると思う。
  • I've seen talent thrown away on your loan shark…ここで言う「あなたがた高利貸しの手によって投げ捨てられてしまった才能」とは、この曲が録音される数ヶ月前に死去したピストルズのベーシストであり、ジョー·ストラマーの親友でもあったシド·ヴィシャスのことを指していると解釈されているらしい。だとしたらジョー氏は彼氏のことを「食い物」にして死に追いやった麻薬組織やギャング組織に対して「ケンカを売っている」ことになる。やんわりとした言い方だけど。
  • El Clash Combo…「エル·グラン·コンボ」というプエルトリコの有名なサルサグループのパロディバンドをやらしてもろてますー、という意味らしい。
  • Bongo Jazz…ボンゴをフューチャーしたジャズのこと(←こおゆうのって、「説明」になってるんだろうか)

nagi1995.hatenablog.com
Everything's gonna be all right」というのはやっぱり、「いい歌詞」だと思う。誰もが心から口にすることのできる「祈り」になっているからなのだろうな。今回の記事はとりわけ他地方の皆さんに対しては「読むにたえない内容」になっているかもしれず、その点に関しては、少しだけ反省しております。ではまたいずれ。


=楽曲データ=
Originally Released by Danny Ray and the Revolutioneers (1976)
Released: 1979.12.14.
Key: B