華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

ロビー·ロバートソン自伝「Testimony」読書ノート #6.

#5 Testimony#7

  • 最初のバンド「リズム·コーズ」で演奏するロビー

1950年代は「ロックンロールのビッグバン」の時代だったが、アメリカでは60年代初頭には早くもその火は消えかかっていた。ピアニストのスタンは将来の見通しが立たないことからバンドを抜けたいと言い出し、ロニー·ホーキンスは早速新しいピアニストを探し始めた。

ホークスはトロントではそれまでより1ランク高いホテルに「Nest (根城)」を構えることのできる身分にのし上がっていたが、多くのメンバーは依然として「ママ·コッシュ」=ロビーの母親のアパートに入り浸っていた。彼女はホークスのメンバーからちゃっかり部屋代までとっていたらしいのだが、料理はおいしいしうるさいことは言われないし、他のメンバーにとってはこの上なく居心地のいいところだったらしい。

だが、他のメンバーがそこに好き勝手に女の子を連れ込むこと、かつ母親がその子たちをも手厚くもてなすこと、そして自分は思うように同じことができないことについて(いやまあ、やろうと思えばできるのだろうが、やっぱり自分の母親の家では、やりにくいだろう)、ロビーは居心地の悪い気持ちを感じてもいたのだという。ともあれ、ママ·コッシュという人はそういう面でも非常に「ユニーク」な人だったと書かれている。

そんなある日のこと、実の父親の兄弟のネイティおじさんが、ダイヤモンドの非合法取引をめぐって警察の捜査線上に上がっているというニュースが新聞に躍る。ショックを受けて気が気でないロビーのところへ、そのネイティおじさんから電話がかかってくる。「ヤング·ストリートのカプリ·レストランに来い」。言われたのはそれだけだ。

指定された場所に行ってみると、ネイティおじさんはいつも通りの格好で待っていた。そして「新聞の情報やウソの噂に踊らされるな」と言われ、

「お前の父親は私のヒーローだった。今でも尊敬している。私がやっているのは、彼のやっていた仕事と変わらないことだ。お前の父親が生きていたら、きっとパートナーになっていただろう。いま私は、大きな仕事をやっている。お前にも分け前が行くようにしたい。わかるか?ジェイミー、お前は私の甥であり、私はお前を守らなければならない。もしも私が多くのことを教えすぎたら、お前の身は危険にさらされることになる」(大意)

といったようなことを言われる。その言葉がロビーには

"Welcome to the underworld"

と聞こえたらしい。なかなか、手に汗握る話である。

以降、盗聴を警戒してネイティおじさんとは公衆電話を通じてだけ連絡を取り合うことになり、その際ロビーは「ミスター·ハッチンス」という偽名を使うことも確認された。そういうやりとりがロビーには結構「気に入った」と書かれている。

オンタリオ州南部をめぐるツアーを通じ、地元の才能ある若手ミュージシャンとは大体知り合いになったホークスだったが、その最大の「発見」は、あの日ロビーとレベルがグランド·ベンドの街頭で行きあったリチャード「ビーク」マニュエルの存在だった。

We were playing an auditorium near Stratford, Ontario, Richard's hometown, and his band, the Rockin Revols, was opening. Everybody in the group was talented, but Richard's voice particularly stood out-it had such richness and power, such maturity for an eighteen- year-old kid. You heard it most on those Bobby "Blue" Bland covers- when Richard sang, you melted away. His piano playing wasn't as rollicking as we were used to in the Hawks; he wanted to be more like Ray Charles than Jerry Lee. But he had all of the standard R&B piano licks down, and he was just the right age for Ronnie to believe he could be broken in and shaped. Richard's volatile relationship beer, which Rebel and I had witnessed firsthand, appeared to have mellowed, which helped his chances with Ronnie. Now he seemed more like a "good-time Charlie"-a guy who liked to sometimes have a brew. Best of all, he was hungry to play with us and eager to prove he could cut it as a Hawk.
我々はリチャードの地元のストラトフォード近郊の公会堂で演奏しており、彼のバンドの「ロッキン·リボルズ」が前座をつとめていた。グループの全員が才能にあふれていたが、リチャードの声は飛び抜けていた。豊かさと力強さがそこにはあった。18歳とは思えない成熟度だ。ボビー「ブルー」ブランドのカバーを聞くとそれが分かる。リチャードが歌い出すと、聞く人間は溶けてしまう。彼のピアノは、それまでホークスのピアニストがやっていたように陽気で騒がしいものではなかった。ジェリー·リー·ルイスよりもレイ·チャールズのスタイルを彼は気に入っていた。けれどもリチャードはスタンダードなR&Bのあらゆるリフを弾きこなすことができたし、それにロニーが「一番伸びしろがある」と信じているところの年齢に、彼の年はピッタリだった。レベルと私が最初に目撃したリチャードとビールとの危なっかしい関係も、見たところ「成熟」しているようだった。このことはロニーの眼鏡にかなうためにも、彼に幸いした。今の彼は「グッドタイム·チャーリー」といった感じに見えた。時々派手にやらかすのが好きな男といったぐらいの意味だ。何よりも彼は飢えたように我々と一緒に演奏したがっていたし、ホークスの一員としてやって行けることを証明してみせたいという情熱に燃えていた。

Richard's voice was there from the start, but when I got to know him, I found he was also one of the nicest, sweetest people you'd meet. He was funny, but when someone else was funny, no one appreciated it more than Richard. His great big teeth stood out when he smiled and he could laugh as good as Levon, which made him even more lovable. Richard's joining the Hawks would be an easy fit.
リチャードとの出会いは最初に声ありきだったが、彼のことを知るにつれ、同時に彼は最高にナイスで優しい人物でもあることに私は気づいた。彼は愉快なやつだったが、他の人が愉快だと言われることがあっても、誰もリチャードにはかなわなかったに違いない。彼が微笑むと素晴らしく大きな前歯がこぼれた。そして彼はリヴォンと同じくらい、いい笑い方をした。それは彼にいっそうの愛嬌を付け加えていた。リチャードのホークスへの参加は、きっと彼にとっても快適なものになっただろう。

There was an unwritten law about hiring musicians away from other bands, so after Levon and I gave Richard our full recommenda tion, Ron hired the Rockin Revols to serve as the house band at his club in Fayetteville, Arkansas. There would be a transition period- Stan would stay until he figured out his next move, and Richard could be initiated into the group while the Revols looked for his replacement.
別のバンドのミュージシャンを雇い入れる時にはある不文律があったので、リヴォンと私はリチャードにそれを詳しく説明した。そしてその後、ロニーはロッキン·リボルズを、アーカンソー州ファイエットビルにある自分のクラブのハウスバンドとして丸ごと雇い入れた。(それまでのピアニストの)スタンが次の落ち着き先を決め、かつリボルズがリチャードの代わりになるようなメンバーを見つけられるまでの移行期間の措置としてである。

In the meantime, Rick was getting more comfortable in his skin as a Hawk. He had a keen ear for music and for his new surroundings. Levon felt Rick needed a total makeover and Rick stepped right up. And though Richard didn't have the jackhammer rockabilly piano style of his predecessors, when he sang, all was forgiven. It didn't take Beak long to look the part too. Since Levon and I always hung together, Rick and Richard quickly bonded and became running mates. When they sang Sam Cooke's "Bring It on Home to Me," the sun came out.
ちょうどその頃、リックもますますホークスの一員として、落ち着いた雰囲気を身につけつつあった。彼は音楽と周りの環境に対する、鋭い耳を持っていた。リヴォンはリックには完全なイメージチェンジが必要だと感じており、リックは着実にそれを成し遂げていた。そしてリチャードは、その前任者たちの削岩機のようなロカビリーピアノのスタイルこそ持ち合わせていなかったものの、ひとたび彼が歌えば、すべてが許されていた。ビークもそれらしく見えるまでには、時間がかからなかった。リヴォンと私はいつもつるんでいたので、リックとリチャードもすぐにくっつくようになり、同走者となった。二人がサム·クックの「Bring It on Home to Me」を歌うと、太陽が顔を出した。


Bring It on Home to Me

…そんな風に言われたら「Bring It on Home to Me」を聞いてみずにはいられなくなるではないかということで、聞いてみて、かつ貼りつけてしまった。トータス松本氏がかつて歌っていたっけな。これをまだ10代のリックとリチャードが仲良く歌っていたのかと思うと、女の人なら絶対にメロメロになってしまうと思う。私もちょっと、なっている。ちなみに「good-time Charlie」という言葉をWeblioの辞書で引いてみると「チャラ男」という訳語が載っていたのだが、これは絶対に辞書の方が間違っているだろうと私は思った。よしんばロビーがリチャードのことを何か否定的な言葉で形容する場面があったとしても、「チャラ男」などとは絶対に呼んでいないはずだと思う。リチャードはチャラ男ではない。知らんけど。

カナダを離れオクラホマ州に向かう道すがら、ロニーはロビンに、オンタリオ州ロンドンで出会ったジェリー·ペンファウンドというサックスプレイヤーのことを覚えているかと声をかける。ロニーはバンドにホーンセクションを加えて、音を厚くすることを考えていたのである。

When Ron brought up Jerry's name, I felt inspired to mention a piano player we'd heard in London, Ontario, who'd come to Grand Bend. "You remember Garth Hudson?" I asked. "Well, I talked with him, and besides being a really skillful musician, he's a fascinating and unusual guy. He mentioned this new gizmo that hooks up to a piano and sounds like an organ. It would make us sound twice as big."
ロニーからジェリーの名前が出た時、オンタリオ州ロンドンで聞いたピアニストのことを話してみたらどうだろうという考えが浮かんだ。グランド·ベンドに来ていた人物だ。「ガース·ハドソンのこと、覚えてますか?」と私は言った。「あのね。おれその人と話もしたんですけど、本当にうまいミュージシャンだし、それだけでなく、すごく魅惑的なところのある、普通でない人なんです。何か、ピアノとオルガンの音を合わせたような新製品のことを話してたんですけど、それがあるとバンドの音が二倍にも大きく聞こえるらしいですよ」

"That right?" Ronnie looked up.
「まじか」とロニーは顔をあげた。

"Yes," I said. "He plays different saxophones, and he's a monster of a piano player. He can play any kind of music."
「まじす」と私は言った。「その人、種類の違うサキソフォンも吹けるし、ピアノを弾かせたら怪物です。どんな音楽でもできる人なんです」。

I could see Ron turning it over in his head. "Yeah, to have an organ and horns, that would be a big sound," he admitted.
ロンの頭の中でスイッチが入ったのが私には分かった。「確かにオルガンとホーンが入れば、でっかい音になるな」。彼も認めた。

…ついにガースの登場だ。この本もいよいよ役者が出そろった感がある。

その後、ロビーがオクラホマで生まれて初めて竜巻を目撃したエピソードが、さすが詩人だと思わせられるような文学的なタッチで描写されたりしているのだけど、割愛する。

さらにオクラホマ州タルサというところのクラブのオーナーが、バンドへの支払いを踏み倒そうとしたため、怒ったロニーが店にガソリンをまいて火をつけてぶっ飛ばしたエピソードも紹介されているけれど、同じく割愛する。ちなみにリヴォンの自伝にはその時「ロビーが15ガロンのガソリンをまき、おれがマッチを擦った」とハッキリ書いてあるのだけれど、ロビーの書き方は「As I heard the story...(聞いたところでは…)」といった感じで、あたかも自分はその場にいなかったかのような印象を与えるものになっている。まあ、あまり詮索しようとは思わないのだけど。あと、店に火をつける前に、そこのハウスバンドをつとめていたレオン·ラッセルの機材を丁重に運び出したという顛末は、両者の自伝に共通して記載されており、ミュージシャン同士の「仁義」のありようを示すエピソードとして、味わい深い。

In London, Ontario, Richand "Beak" Manuel finally took over on piano and vocals. Rick had become pretty solid on bass, and his singing was getting featured more. Ron always liked the idea of having Rick, Richard, or Levon take a lead vocal here or there, making the show more like a Ronnie Hawkins Revue. By now too my guitar playing was becoming a crowd pleaser unto itself. And Jerry Penfound finally came on boand officially, bringing a fresh new sound to the Hawks with his flute and saxes.
オンタリオ州ロンドンで、リチャード「ビーク」マニュエルは、ついにピアノ&ボーカルの座をかちとった。リックのベースも実に安定したものになり、その歌はいっそう彼らしさを出すようになっていた。ロンはリックやリチャード、そしてリヴォンにそこここでリードボーカルを担当させ、ショーの全体を「ロニー·ホーキンス·レヴュー」のような形にするアイデアを楽しんでいた。私のギターも、今やそれだけで観衆を喜ばせるものとなりつつあった。そしてジェリー·ペンファウンドも最終的に正式にバンドに参加することになり、そのフルートとサックスで、ホークスにフレッシュかつ新しい音をもたらした。

And then there was Garth Hudson. With his dark hair, long forehead, and pale skin, Garth looked jazz-musician cool, or like someone who hadn't been out in broad daylight for ages. He played brilliantly, in a more complex way than anybody we had ever jammed with. Most of us had just picked up our instruments as kids and plowed ahead, but Garth was classically trained and could find musical avenues on the keyboard we didn't know existed. It impressed us deeply Levon and I pushed Ron to try to get him to join us.
そしてガース·ハドソンという人物がいた。その黒い髪と広い額、青白い肌から、ガースはジャズミュージシャン的なクールさを持ち合わせているようにも見えたし、また何年も太陽の光を浴びたことのない人のようにも見えた。彼の演奏は輝くようで、そして我々が一緒に演奏したことのある誰よりも複雑なやり方を備えていた。我々のほとんどは子どもの頃に楽器を手に取り、我流で練習してきたのだが、ガースはクラシックの教育を受けており、我々がその存在すら知らなかったような音楽の大通りが鍵盤の上に交錯しているのを、見つけ出すことができた。それは我々に深い印象を残した。リヴォンと私は、何とかして彼をバンドに引き込めるよう、ロニーにプッシュした。

Garth was quiet and clearly a bit offbeat. While Ronnie understood that he was an amazing musician, he was a bit concerned about his being so different from the rest of us. We'd been through ups and downs with personality mismatches like Magoo and Stan, and Ron preferred having guys who fit easily into the fold. But I embraced Garth's difference, and it helped that Levon did too. I was studying Garth, sensing there was something special to be learned from him. It really caught my attention when he spoke about playing the organ in church and at his uncle's funeral parlor. He talked with real passioin about emotionally controlling the crowd with his music, making people break down or rejoice through the hymns he chose. "I found some true enjoyment in helping people get to the bottom of their feelings," he explained in a manner that sounded anything but condescending. "I felt I was doing a service, in a way. It did seem like they appreciated that." He added humbly, "It was more than just a job to me."
ガースは物静かで、明らかに風変わりなところのある人間だった。ロニーは彼が驚嘆すべきミュージシャンであることを理解していたが、彼のキャラクターが他のメンバーとあまりに違っていることをやや気にしていた。人間関係のミスマッチをめぐっては、マグーやスタンの時がそうだったように我々はいろいろなことを経験してきており、そしてロンは扱いやすいタイプの人間を好んでいた。だが私はガースの「違い」をこそ受け入れるべきだと思ったし、リヴォンも同じ考えになった。私はガースから多くのことを学んでいたし、また彼からは学ぶべき特別なことがあるということを、感じ取ってもいた。彼が自分のおじさんの葬儀場で教会のオルガンを弾く時のことを語った話には、とりわけ惹きつけられた。彼は自分が選んだ賛美歌を通じて聴衆を泣かせ、また喜ばせ、そんな風に自分の音楽の力で人の心を感情的にコントロールすることがどういうことであるかということについて、本物の情熱を込めて語った。「私は、人の感情を根底から揺り動かすその手伝いをすることにこそ、本当の喜びを見出したんです」。彼はこの上なく腰の低い態度で、そう説明した。「自分のやっていることは、ある意味で奉仕活動だと私は思ってきました。みんながそれを喜んでくれているように思いました」。と彼は謙虚に付け加えた。「それは私にとっては、単なる仕事以上のものだったんです」。

…長い引用になったけれど、こういった箇所は丁寧に読んでおきたいと思う。ロビーにとって仲間たちとの出会いが人生で一度だけの出来事だったように、我々もそれを本当の意味で追体験することができるのは「一度だけ」なのである。

その後、ロニーがガースのカタい両親を口説き落として、「音楽の先生」としてホークスに来てもらうまでの顛末は、「Chest Fever」の記事で細かく触れたことと大して変わる内容が書いてあるわけでもないので、省略する。

トロントでは相変わらず「ママ·コッシュ」のアパートが、ホークスのねぐらになっていた。本文によるとリックとリチャードが3階を占拠し、リヴォンとガースとロビーが2階を占領していたとある。ほとんど「お母さんつきのビッグ·ピンク」である。ロニーは基本的にホテル生活だったらしいが、そこで客人をもてなす際にもママ·コッシュが出張して、料理を作ったり接待したりしていたらしい。単にロビーのためだけでなく、このお母さん自身がそういう賑やかなことの好きな人だったのだろうなと思う。

そんなある日、ネイティおじさんがママ·コッシュのアパートを訪れ、「状況が変わった」と言う。「安全なところに引っ越すことにした」のだという。

「安全な」という言葉に衝撃を受けているロビーに、ネイティおじさんは(細かいことはともかく)今の自分が命を付け狙われている状況にあることを告げ、身を守るために「ヴォルプ·ファミリー」と手を組むことに決めたと伝える。ゴッドファーザーのポール·ヴォルプ直々の申し出なのだという。Wikipediaにも名前が載っているトロントのイタリア系マフィアの大ボスである。ロビーは自分の周りに起こっていることがあまりにシュールで、現実のこととも思えない。とはいえ自分は単なるロックバンドのギタリストだし、ネイティおじさんが親戚だったということ自体、数年前まではどちらも知らなかったのだし、関係ないといえば関係ない。そう考えた。

と思ったらまたある日、ネイティおじさんがポール·ヴォルプ本人を連れてホークスのライブを見に来ると言ってくる。そのことをリヴォンに伝えたら「his jaw dropped」と書いてある。アゴが落っこちたのである。とにかくロニーには知らせないようにしようという話になる。そういうことを知った時のあの人の悪ノリの仕方は、危険だ。

当日、ポール·ヴォルプはネイティおじさん夫婦と共に悠然とコンサート会場に姿を現す。トロントでは超有名人なので、会場ではみんなが互いをつつきあったりして、すごく穏やかならざる雰囲気になる。ステージからヴォルプの姿を見たロビーは、彼がいつかおじさんにカプリ·レストランに呼び出された時、遠くない席に座っていた人物だったことに気づく。

緊張感に満ちたステージが終わると、ロビーは地元のチンピラ連中に囲まれて、いきなり「おごらせてくれ」と言われる。どういうことかと訊ねると、「お前のおじさんとヴォルプの関係を聞かせろ」と言うのである。

「知らないよ」とロビーは肩をすくめる。「ただの友だちだろ。いい人なんじゃないの?」みたいなことを言い、「じゃ、花に水をやらないといけないから」的なことを言って立ち去る。本当に「I gotta go water the flowers」と書いてある。

その後ろ姿に向かって、チンピラのボスは「いつかお前に追いついてやるぞ」と捨て台詞を吐いたらしい。そういうことをことさらに客観的な表現で書き綴っていること自体、ロビーはやっぱり吹かしていると私は感じる。

英語版Wikipediaの記述によるならば、ポール·ヴォルプという人物はその後、1983年にバッファローのマフィアとの抗争で暗殺されたと書かれている。本の終わりの方では、それにまつわる話も出てくるのかもしれない。ではまたいずれ。