華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

White Room もしくは台風一過の日曜日 (1968. Cream)


White Room (Joker OST)

台風19号、おかげさまで今度は私のところは無事だった。心配して下さった皆さんに感謝すると共に、被害に遭われた皆さんに心からお見舞い申し上げます。

このブログも無事に再開することができる運びとなったので、映画「Joker」に使われていた曲をもう一曲、訳出しておくことにしようと思う。映画のクライマックスの思い切りアナーキーなシーンで、それまでの話の流れを全部引っくり返すかのように鳴り響いていた曲である。

作詞はピート·ブラウンという詩人の人で、世間一般の(?)ロックの歌詞とはずいぶん違った趣きの言葉が並んでいる。そんな事情もあって内容の解釈をめぐってはかなりいろんな論争が繰り広げられている歌らしいだのが、このブログでは特に細かい注釈はつけないことにする。何より台風で疲れたし。

私にとっては、2010年代の終わりに近いある日の真夜中に、天井を引き剥がすような雨風の音に慄きながら必死で言葉を選んで翻訳していたのが下の歌詞だった、という記念が残ればそれでいい。というのが今回の記事である。ではまたいずれ。みなさんお大事に。


White Room (Joker OST)

White Room

英語原詞はこちら


In the white room with black curtains near the station
Black roof country, no gold pavements, tired starlings
Silver horses ran down moonbeams in your dark eyes
Dawnlight smiles on you leaving, my contentment

白い部屋の中
窓には黒いカーテン
ところはステーションの近く
黒い屋根のくに
舗道には黄金が敷かれているでもなく
疲れ果てたスターリング(ムクドリ)たち
銀の馬の群れ
月光を駆け降りて行った
あなたの暗い瞳の中で
曙光は微笑みかける
出てゆくあなたの上に
この満ち足りた気持ち


I'll wait in this place where the sun never shines
Wait in this place where the shadows run from themselves

この場所でわたしは
待つことになるだろう
太陽の光が
永遠に差し込まないこの場所で
この場所で
待つことになるのだろう
影たちが自分から
姿を消してゆくこの場所で


You said no strings could secure you at the station
Platform ticket, restless diesels, goodbye windows
I walked into such a sad time at the station
As I walked out, felt my own need just beginning

自分を固定するためのヒモなんて
ステーションにはないのだと
そうあなたは言った
プラットホームの入場券
ひっきりなしのディーゼルの響き
サヨナラの窓ガラスの列
そんなにも悲しい時間の中に
わたしは歩み入った
そのステーションで
歩み出た時に
わたしは感じていた
求める気持ちが
生まれつつあることを


I'll wait in the queue when the trains come back
Lie with you where the shadows run from themselves

列の中に混じって
わたしは待つことになるのだろう
列車が帰ってくるのを
影たちが自分から
姿を消してゆくあの場所で
あなたと横たわることになるのだろう


At the party she was kindness in the hard crowd
Consolation for the old wound now forgotten
Yellow tigers crouched in jungles in her dark eyes
She's just dressing, goodbye windows, tired starlings

パーティでの彼女は
すれっからしの人混みの中で
やさしさの化身だった
今では忘れられてしまった
古傷の上に与えられる
なぐさめそのものだった
黄色い虎たち
ジャングルに身を屈めていた
彼女の暗い瞳の中で
ただの着飾った装い
サヨナラの窓ガラスの列
疲れ果てたムクドリたち
それが彼女なのだ


I'll sleep in this place with the lonely crowd
Lie in the dark where the shadows run from themselves

わたしはこの場所で
眠りにつくことになるのだろう
孤独の群衆と共に
影たちが自分から
姿を消してゆくその場所で
闇に横たわることになるのだろう



=楽曲データ=
Released: 1968.8.9.
Key: F