華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

This Jesus Must Die もしくはジーザス·クライスト·スーパースター#6 (1970. Tim Rice)

Jesus Christ Superstar


This Jesus Must Die

  • エルサレムの日曜日。カヤファの城塞に組まれた鉄パイプの足場に、続々と聖職者たちが登ってくる。眼下にはイエスを囲んだ群衆が、行進してくるのが見える。

This Jesus Must Die

ジーザスという男は死なねばならない

英語原詞はこちら


[Priest 1:]
Good Caiaphas, the council waits for you.
The Pharisees and priests are here for you.

[聖職者1]
これはこれはカヤファさま。
評議会があなたをお待ちしています。
パリサイ派も祭祀たちも
あなたのために集まっております。


[Caiaphas:]
Ah gentlemen, you know why we are here.
We've not much time, and quite a problem here

[カヤファ]
ああ諸君
本日われわれがここに集まった理由は
ご承知のことと思う。
われわれには時間がない。
そして極めて重体な問題が
ここまで迫って来ている。


[Mob:]
Hosanna! Superstar!
Hosanna! Superstar!
Hosanna! Superstar!
Hosanna! Superstar!

[群衆]
ホザンナ!スーパースター!
ホザンナ!スーパースター!


[Annas:]
Listen to that howling mob of blockheads in the street!
A trick or two with lepers, and the whole town's on its feet.

[アンナス]
街頭から聞こえてくる
あの無知な群衆の騒ぎ声はどうだ。
一人か二人のハンセン病患者を相手に
やってみせたインチキで
町中がそれにひれ伏している。


[All the Priests:]
He is dangerous!

[全聖職者]
あの男は危険だ!


[Mob:]
Jesus Christ Superstar!

[群衆]
ジーザス·クライスト!スーパースター!


[All the Priests:]
He is dangerous!

[全聖職者]
あの男は危険だ!


[Mob:]
Tell us that you're who they say you are.

[群衆]
あなたこそみんなが言っている
あの方なのだということを
私たちに示してください!


[Priest 2:]
The man is in town right now to whip up some support.

[聖職者2]
あの男は自分の支持者を集めるために
街に入ってきたのだな。


[Priest 3:]
A rabble rousing mission that I think we must abort.

[聖職者3]
神の使命に目覚めた暴徒達というわけだ。
われわれは何としても
あれを止める必要があるだろう。


[All the Priests:]
He is dangerous!

[全聖職者]
あの男は危険だ!


[Mob:]
Jesus Christ Superstar!

[群衆]
ジーザス·クライスト!スーパースター!


[All the Priests:]
He is dangerous!

[全聖職者]
あの男は危険だ!


[Priest 2:]
Look Caiaphas, they're right outside our yard.

[聖職者2]
ご覧くださいカヤファさま。
あの者どもはわれわれの敷地にまで
迫ってきております。


[Priest 3:]
Quick Caiaphas, go call the Roman guard.

[聖職者3]
急ぎましょうカヤファさま。
ローマの警備兵の出動を要請して下さい。


[Caiaphas:]
No, wait!
We need a more permanent solution to our problem.

[カヤファ]
いや、まて。
われわれはこの問題に対し、
もっと永続的な解決を与えることが必要だ


[Annas:]
What then to do about Jesus of Nazareth?
Miracle wonderman, hero of fools.

[アンナス]
ではあのナザレのイエスめを
どうしてくれましょうか?
奇跡の男、愚者どものヒーローを?


[Priest 3:]
No riots, no army, no fighting, no slogans.

[聖職者3]
暴動を起こしているわけでもないし
武装しているわけでもないし
スローガンを叫んでいるわけでもない。


[Caiaphas:]
One thing I'll say for him -- Jesus is cool.

[カヤファ]
あの男について言えることがあるとすれば
イエスというやつはクールだということだ


[Annas:]
We dare not leave him to his own devices.
His half-witted fans will get out of control.

[アンナス]
あいつの計画が進むのを
指をくわえて見ているわけには行かない。
あの知恵の足りない取り巻きどもは
すぐにわれわれのコントロールが
効かない存在になることだろう。


[Priests:]
But how can we stop him?
His glamour increases
By leaps every minute; he's top of the poll.

[聖職者たち]
しかし、どうやって
あの男を止めればいいでしょう?
あいつの人気はうなぎのぼりで
分刻みで跳ねあがっています。
やつは世論の先頭に立っていますよ。


[Caiaphas:]
I see bad things arising.
The crowd crown him king; which the Romans would ban.
I see blood and destruction,
Our elimination because of one man.
Blood and destruction because of one man.

[カヤファ]
よくないことが起こりつつあるのが
私にはわかる。
あの群衆はあの男を
王として押し上げようとしている。
それはローマが絶対に許さないことだ。
血と破壊が見える。
たったひとりの男のために
われわれは皆殺しにされるのだ。
たったひとりの男のために
血と破壊とがもたらされるのだ。


[All the Priests:]
Because, because, because of one man.

[全聖職者]
たったひとりの
たったひとりの
たったひとりの男のために


[Caiaphas:]
Our elimination because of one man.

[カヤファ]
たったひとりの男のために
われわれは皆殺しにされるのだ。


[All the Priests:]
Because, because, because of one, 'cause of one, 'cause of one man.

[全聖職者]
たったひとりのたったひとりの
たったひとりのために
ひとりのために
たったひとりの男のために


[Priest 3:]
What then to do about this Jesus-mania?

[聖職者3]
ではあのジーザス·マニアの連中を
どうしてくれましょうか?


[Annas:]
Now how to we deal with a carpenter king?

[アンナス]
あの「大工の王様」を
われわれはどう料理してくれましょうか?


[Priests:]
Where do we start with a man who is bigger
Than John was when John did his baptism thing?

[全聖職者]
ヨルダン川で洗礼とかいうものを
施していた頃のあのジョン(ヨハネ)より
今や大きな存在になってしまった
あの男のことに
われわれはどこから
手をつけたらいいものでしょうか?


[Caiaphas:]
Fools, you have no perception!
The stakes we are gambling are frighteningly high!
We must crush him completely,
So like John before him, this Jesus must die.
For the sake of the nation, this Jesus must die.

[カヤファ]
愚者どもよ
おまえたちにはわからないのか!
われわれの賭けのリスクは
恐ろしいまでに跳ねあがっているのだ!
われわれはあの男を
完全につぶしてやらねばならない。
だからあの男の前に現れた
ジョンと同じように
ジーザスというやつは死なねばならない。
国家の利益のために
ジーザスというやつは死なねばならない。


[All the Priests:]
Must die, must die, this Jesus must die.

[全聖職者]
死なねばならない。
死なねばならない。
ジーザスというやつは死なねばならない。


[Caiaphas:]
So like John before him, this Jesus must die.

[カヤファ]
あの男の前に現れたジョンと同じように
ジーザスというやつは死なねばならない。


[All the Priests:]
Must die, must die, this Jesus must, Jesus must, Jesus must die!

[全聖職者]
死なねばならない。
死なねばならない。
ジーザスというやつは
ジーザスというやつは
ジーザスというやつは死なねばならない!



歌詞中に使われている「leaper」という言葉は、ハンセン病患者に対する差別表現です。ここでは原文をそのまま転載しました。
 また「fool」という言葉は「精神病者」に対する差別表現です。同じく原文をそのまま転載しました。


Jesus Christ Superstar 1973. 今回は21:20〜25:10

=翻訳をめぐって=

  • 「死なねばならない」あるいは「死ななければならない」。私の地元周辺で話されている関西方言では「死なんなん」とだけ言えば通じる話なので、この持って回った東京弁の言い方は非常にまだるっこしく感じられる。単なるグチなのですけど。
  • Good Caiaphas
    • この「good」は「よい」という意味ではない。手元の辞書には明記されていない用法だが、明らかに「あいさつみたいな言葉」として使われている。なのでとりあえず「これはこれは」と訳したが、ニュアンスとして正確なのかどうか自信があるわけではない。ネイティブの方の意見をお待ちしています。
  • Hosanna! Superstar!
    • 「ホサナ」もしくは「ホザンナ」は、ヘブライ語で「どうか救ってください」を意味する「ホーシャ·ナー」というフレーズが転じて、キリスト教の礼拝でも使われるようになった言葉。「あしきを払うて助けたまえ」みたいに訳せないこともないけれど、音訳の方が適切だと思う。「アーメン」だって、あえて「翻訳」するなら「本当にその通りです」という意味なのだ。
  • We need a more permanent solution to our problem
    • この「permanent solution」という言葉は、ナチス·ドイツによる「ユダヤ人絶滅のための最終計画」(Endlösung)を連想させるフレーズとして意図的に選択されているのだと思われる。後に出てくる「elimination (除去)」という単語についても同じ。
  • One thing I'll say for him -- Jesus is cool
    • このカヤファの台詞は、現行のミュージカルバージョンでは「Infantile sermons, the multitude drools (子どもじみた説教で大群衆がよだれをたらしていやがる)」というフレーズに差し替えられているとのこと。作詞者のティム·ライスによれば「単に語呂(rhyming)の問題」だというのだが、この変更で全体のイメージがずいぶん変わったと感じているファンも多いらしい。確かにカヤファがイエスのことを「認めて」いるととれる歌詞は、この部分だけである。
  • What then to do about this Jesus-mania?
    • このロック·オペラが作られた時期はちょうど「ビートルマニア」と呼ばれた人たちの活動がかまびすしかった時代で、そのイメージが重ねられているらしい。



というわけでまたいずれ。